顧客からの不満の声にトコトン対応していく−−マイクロソフト社長・樋口泰行

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--中期計画に掲げる「確実な成長」を実現するためには、新製品への買い替え促進が不可欠です。にもかかわらず、最新OSの「ビスタ」ではなく「XP」を使用し続ける企業がいまだに多い。前08年6月期が予算比で未達になった理由はそこにあったのではないですか。

昨年度は確かに厳しい部署もありましたが、全体的には成長しています。本社の期待が大きく、予算が高めだったということです。先進国は高い成長を期待されており、その意味では大変チャレンジングです。

(アプリケーションが問題なく動くかどうかの)検証が終わっていないとの理由でXPを使い続けている企業が多いのは確か。しかし、われわれのほうがビスタの魅力をちゃんと説明できていない面もある。メガホンを持ってみんな歩け、と。せっかくこんないい商品があるのに、そのことをちゃんと伝えているのかといえば十分ではない。(機能改善をした)SP1やサーバーOSも出たので、これからキャンペーンに力を入れていきたいと思っています。

--企業にとっては、たとえば動画再生機能が充実してもあまりメリットがないのかもしれない。ソフトに機能面での飽和感が出ているようにも見えます。

携帯電話はそうとう進化し、パソコンに近づいてきています。ですから、パソコンを使わず携帯でほとんどのことをやってしまう人も増えている。それから、昔のようにパッケージソフトを買ってパソコンにインストールするより、クラウドサイド(=インターネットの向こう側)に面白いサービスがたくさんある。ということからすると、パソコンサイドではなかなか付加価値をつけにくくなっているというのは、素直に認めざるをえません。

その中でわれわれはパソコン、モバイル、クラウドの三角形をうまくつくり、ユーザーに対する最大限の付加価値をつけることを目指しています。コンシューマー&オンライン事業部という新しい部署でこの戦略を推進していく。こういう三角形をうまくつくれるのは、やはりマイクロソフトだけだと思います。

--今期は特に大きく伸びる分野として、どこを想定していますか。

伸び率としては、ウィンドウズモバイルの携帯電話への搭載が大きく伸びます。それから、企業向けには情報基盤となるシェアポイントサーバーに、強い引きがある。全体的な流れとしては、日本はまだまだレガシーな汎用機を利用している企業の割合が世界一高く、システムを進化させていこうとした場合に柔軟性がない。そのため、ウィンドウズプラットフォームに対する期待がすごく高まっているのを感じています。

--コンシューマー&オンライン事業部を統括する堂山昌司副社長、企業向けビジネスの窪田大介専務など、外部からの人材を経営幹部に据えました。

ITの世界は、たとえば製鉄、造船などと比べると、戦略の寿命がそんなに長くないですよね。インターネット経由でソフトの機能が提供されるクラウドコンピューティングは、回線が安価になり信頼性が高まったことで可能になった。こうなると当然、戦略は変わる。しかし、同じ構成員だと舵を切るのが難しい。経験のある人を入れ、そこからまたみんな学んでいく、成長していく、次の世代を育てていくというプロセスが、いちばんの最短距離です。日本法人だけでなく、米本社でも外部から新しい人材を採用し続けています。

--マイクロソフトでは社長を何年やる予定ですか。中期計画の3年がメドでしょうか。

5年はやらせてほしいですね。これまで転々としましたので、腰を落ち着けて全身全霊で仕事をしたいと思います。しかし、5年でちょうど55歳を過ぎます。ちょっとこの会社のスピード感からすると、ご迷惑をおかけするかなと思います。それに、あまり長くいるとどこの会社でもおかしくなります。5年で次にきっちりとバトンタッチできる体制をとれたらいいかなと考えています。そして、その時に元気があれば、また新しい挑戦をしたいと思います。

(山田俊浩 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

ひぐち・やすゆき
1957年兵庫県出身。80年に大阪大学卒業後、松下電器産業入社。米留学後、アップルなどに勤務。2003年に日本HP社長に就任。ダイエー社長を経て07年3月にマイクロソフト日本法人COOに就任、今年4月より現職。

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