「ギリギリOK」の線引きで議論は好転する 「ありきたり意見」しか出ない会議が変わる

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ここで大事なのは、表面的なアイデアの良しあしではなく、「それぞれの案の裏には、どのようなコンセプトがあるのか?」という点です。

アイデアの裏側には、それぞれが考えた「狙い」があります。たとえばこの場合、Cさんの「会社に本棚を置く」というアイデアの裏には、「本を持ってくることで、その人の仕事以外の『オフ』の趣味や関心事がわかると、話しかけやすくなる」という「狙い」があったとします。

よって、Cさんのコンセプトは「人となりを知る」ということであって、本棚というアイデアはあくまで手法にすぎません。

「コンセプト」レベルで選ぶ

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今回のテーマが「社員の団結力を高める」ということでしたので、そのような視点で考えると、ボーリングやBBQに行くだけよりも、Cさんの案のほうが効果的かもしれません。さらに言えば、「本棚を置く」以外にも、人となりがわかるアイデアはまだまだありそうです。

Cさんのコンセプトを生かしつつ、あらためて、もう一度このコンセプトの元で考えてみると、「過去の失敗スピーチコンテスト」「小学校の卒業文集披露」など、さまざまなアイデアを拡散することができます。しかも、「人となりを知る」という中心点が共有されているので、どれだけ拡散しても速やかに収束することができます。

このように、アイデアを表面的に選ぶのではなく、「コンセプト」レベルで選ぶことが、効率的に拡散するためのコツです。

具体的なアイデアと、抽象的なコンセプトを行き来する発想法は、博報堂の打ち合わせの基本的なルールです。特に、1回目のアイデア出しの打ち合わせで重要なのは、アイデアそのものではなく、「コンセプトを決める」という共通認識を持って行うことです。ですので、話す側も聞く側も、「アイデア」と「コンセプト」を分けて考えながら会話をするようにしているのです。

岡田 庄生 博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 ディレクター

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おかだ しょうお / Shoo Okada

1981年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、2004年、株式会社博報堂入社。PR 戦略局を経て、現在、企業ビジョンやブランド、商品開発の支援を行う博報堂ブランドデザインに所属。2013年、日本広告業協会(JAAA)懸賞論文金賞受賞。2014年、日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。著書に『買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣』(講談社)『お客様を買う気にさせる「価値」の見つけ方』(KADOKAWA)などがある。WEBコラム「ブランドたまご」編集長。東京工業大学非常勤講師。日本大学非常勤講師。

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