凱旋門賞制覇へ!理と情熱のホースマン 新世代リーダー 池江 泰寿 JRA調教師

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だが、冷静になってみると、ベストを尽くしたつもりではあったが、挑戦者として勝ちにいったつもりが、どこかで「守りに入った」部分もあった。

オルフェーヴルは、国内のレースでは斜行する癖を出しており、普通の馬よりもかなり乗りにくい部類に入る。だが、結局は本番のレースで、その悪い癖が出た。

「調教を少しだけでも変えていれば、勝てたのではないか」「事前にジョッキーと、馬の細かいクセまでもっと共有できていれば、本番では癖を出さずに済んだのでは…」などと、後悔は尽きなかった。

厩舎期待の一頭、ディープインパクト産駒のアトム(牡2歳)と。9月に初出走、見事勝利を飾った。馬主は、池江厩舎を信頼して、夢を託す

あの敗戦から、はや1年がたとうとしている。今年の10月6日に行われる凱旋門賞に、泰寿はオルフェーヴルで、もう一度挑戦する。昨年の敗戦を糧に、最大限の準備をしてきた。「いまのところ、昨年以上の状態で臨める」とひそかな手ごたえを持つ。

「凱旋門賞に優勝したら、馬車にのってスタンド前をパレードできる。その馬車に、自分の代わりに父をのせてあげたい。父が乗ったら、その馬車にはスペースがないので自分は乗ることはできない。でも、それでもいい。自分はいいから、その馬車に父をのせてあげるのが今の夢」。

もちろん、この夢を達成しても、続きがある。「いまはまだまだ満足できるところまではいっていない。厩舎の管理馬の層を厚くして、毎年凱旋門賞に出られるようにならないと」。

父の背中を見て調教師を志し、調教師になる前も、なったあとも常に自分に影響を与えてきた父。その父が果たせなかった夢を、今年こそは叶えたい。日本競馬界の悲願を、泰寿が達成してみせる――。

(撮影:ヒラオカスタジオ)

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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