「刺さる職務経歴書」を書けない人の根本原因 採用者が知りたいのは「具体的成果」だ

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なぜか? それは現在の状況では、お兄様は非常に残念ながら職歴書に記載する事項がないからだと思われるからです。当然名前や勤務先名は記載できるでしょうが、ここでいう職歴書に記載する事項というのは、個人に帰属する「具体的実績と成果」としての経験のことです。

実はこれはよくある話で、職歴書に勤務先名と所属部署に加え、「所属部署の担当する業務内容そのもの」を記載している人を非常に多く見ますが、これは「見られない職歴書」の典型です。

たとえば、「経理部門所属」で「月次決算業務」と記載するなど、ですね。経理がそういった業務をやるのは当たり前のことで、インタビューをする側が知りたいのは、その中で具体的に候補者がどんな業務を担当し、どんな実績を上げたのか、です。作業のお題目が知りたいわけではありません。ストレートに「入社初日から何ができるのか」を知りたいのです。

お兄様のケースでは、現状そのような具体的に記載できる事項がないがゆえに、採用者に「刺さる」職歴書を書けない状態なのです。そのためには、まずはどんな小さな会社でもよいから、自分自身の経験だと断言できる経験と実績を積むことが大切です。(現在職探しをされているという前提で)お兄様の年齢を考えますと、おそらく次の会社が最後のチャンスである可能性が高いです。

現時点ではキャリア上の軌跡が、言葉は辛辣ですが、何もないわけですから、前述のとおり「短期的には」つまり、次の職では理想論を振りかざして学生のような思考回路になるのではなく、文字どおり最後のチャンスだと認識して、仕事があるだけでも感謝して、辛くとも成果を出すまで踏ん張るべきです。

そうでないと、この先のキャリアを描くのは非常に難しいでしょう。今でさえも、大半の会社からは「戦力にあらず」として採用されないのが現実でしょう。ただし、まだ30ですから、その先をどのように過ごすかによって、まだ人生を立て直す可能性のある年齢とも考えられます。

次の5年間で何をするかが人生を左右する

そのためには、自分が出遅れているという認識を強烈に持ったうえで、それこそ向こう5年間は仕事と仕事に関係する勉強以外は何もしないくらいの覚悟で、必死で自分のキャリアのスタート地点に立つ準備をするべきなのです。

次の5年間なんて、その先の数十年間と比べると大した期間ではありません。その間に何をするかが、今後のお兄様の人生を左右すると思ってください。営業でこの先やっていきたいなら、営業関係の仕事を見つけ、まずは小さくてもよいから歯を食いしばって結果を出すことに注力させましょう。支店営業成績トップでも、社長賞でも何でもよいのです。

小さなことを成し遂げられない人には大きなことを成し遂げることはできません。そういった小さな積み重ねが、やがてテコのように大きな力へとつながるのであり、これは誰にでも当てはまることです。

その期間は、お兄様が仕事をした軌跡を、職歴書を今後書けるようになる修業の期間です。そしてそれが、というよりもむしろ、唯一それがすべてのスタートになるとご認識ください。

理想論を語る、理想の職場を探すのはその先です。まずは人に評価される「仕事」をさせましょうよ。悩める29歳さんのお兄様のご健闘を応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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