深圳の幼稚園児が香港へ「越境通園」するワケ 中国本土から香港に通う子供たち<上>
香港籍を持っていれば、香港で公立の幼稚園や学校に通える。学費は、幼稚園では一部個人負担があるそうだが、小学校以降は基本的に無料だ。
父の峰涛さんが続ける。
「香港の教育資源を考えたからです。香港の教育の経験や環境は、大陸よりもいいですから」
さらに将来、子どもの出国や留学に際しても有利と判断した結果だという。香港パスポートの所有者に対して現在、158の国と地域がビザ免除措置を取っている。夫妻が考慮したのはこの点という。ちなみに大陸の中国人に対してビザ免除処置を取っている国や地域は70程度で半分以下だ。
「将来、子どもの進学に際して世界的な選択が可能になります。子どもの国際化はとても大事だと考えています」
「双非」が増えた理由
田さん夫妻のように、香港籍の子どもの親が2人とも中国人の場合、「双非」と呼ばれる。父と母の「双」方とも「非」香港人という意味だ。
「双非」の子どもが生まれたのには背景がある。2001年、庄豊源という人物の籍をめぐり、香港で最高裁判所にあたる終審法院が「両親が香港籍でなくても生まれた子どもに香港籍を与える」という判断を示した。するとこれがきっかけとなり、中国本土から妊婦がこぞって香港にやって来て出産するという現象が起きた。香港の産婦人科はつねに中国人であふれ返っていたという。
こうして生まれた「双非」、つまり香港人ではない両親を持つ香港籍の子どもの数は、2001年には年間で620人、10年後の2011年には年間3万5736人に増えている。この極端な増加には香港社会から反発の声も上がり、香港政府は2012年には、香港の産婦人科に対し、中国からの妊婦の受け入れを制限する措置を取る。さらに2013年以降に生まれた子どもには香港籍を与えないことを決めた。この2001年から2012年の間に計20万人以上の「双非」の香港籍の子どもが生まれた。
田さん夫妻の2人の娘の誕生は、香港政府の籍に対する方針のちょうど変わり目に当たった。次女の謹熙ちゃんは、香港での出産が許されなくなった後、2014年に大陸で産んだ。そのため中国籍である。香港の幼稚園には通えない。深圳市内で姉とは異なる幼稚園に通っている。
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