弁護士、弁理士はこれから食えますか?

【キャリア相談 Vol.18】

ロムニーもルービンも、ロースクール出身

この環境は米国の状況を考えれば完全にデジャブであり、グリシャムの小説にも食べていけないアンビュランスチェイサー(救急車追っかけ弁護士)が出てくるわけです。米国では出身ロースクールの序列に就職先は影響されます、無名の地方大学出身学生はワシントンでインターンはできないわけです。弁護士じゃ食べられないから他の仕事をやっている人、例えば投資銀行のバンカーや映画のプロデューサーでも、「そういえば忘れてたけど、オレ、弁護士なんだよね」といった人がいますので、ある意味ではそこに近づいているのかと思います。

これは悪いことではなく、官民問わずリーガルマインドを持った人材が供給されるのは良いことです。経済政策であろうが、政策のアプリケーションとは立法ですし、同様にビジネスとは契約です。米国ではJD/MBAプログラムというロースクールとMBAを同時に卒業するという鬼のような学位があり、先の大統領選挙でオバマと戦ったロムニーはこれでした。ロムニーはJD/MBAの後に、筆者も勤務したベイン&カンパニーでビジネスコンサルタントになっています。

米国では法曹キャリア出身者は多く、筆者も在籍したゴールドマン・サックスのトップを務め、財務長官になったルービンもキャリアの振出しは2年間くらいの弁護士生活でした。また、筆者の所属する経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦CEOは、司法試験に合格しても法曹にならずコンサルタントを経て、政府系機構を率いました。

日本(特に東京)における弁護士や弁理士の環境は単なる需給の問題であり、顧客側の需要に対して先生が増えてしまったので、品質等で差別化しないと現在の報酬は正当化できず、ディスカウントされるという経済環境に過ぎません。普通のビジネスの世界と全く同じです。

庶民からすれば、せっかく頭の良い人が資格をとって法律家になったなら、ハゲタカやオフホワイトな人の側に立って稼いだり、マスコミにポジショントークをせずに、弱きを助けてもらいたいものです。弁護士法第1条と国家公務員法第100条は要チェックです。筆者の友人にも、自らが信じる社会正義の為に戦っている先生達はいます。

インハウス弁護士の絶対的な強み

次に②インハウスの弁理士・弁護士の付加価値についてですが、これは良くも悪くも社内事情に通じた上で、適切な法的アドバイスができることが大きいのは自明です。質問者の方は「良い特許が取れるように特許事務所の弁理士や技術者に調整をする雑用的な要素も強く」とおっしゃっていますが、社内の課題を社外の専門家に翻訳する役割は会社側からすれば大きな付加価値です。筆者も経験がありますが、インハウスの方には余計な説明が要らず、「大将、いつものヤツよろしく」と馴染みのお店のように発注できるのが良いところです。またいつもいるので、アウトプットの品質に関する予見可能性も高いものです。

また、インハウスの絶対的な強みは絶対的に会社側に立って考えられることです。いかに弁護士がクライアントに忠実であろうとしても、外の人です。自転車操業フィービジネスの典型である法律事務所はタイムチャージを増やしたいインセンティブが皆無とは言えません。そこでインハウスの法律家が「この買収はここで止めた方がいい」と言ったり、高名な先生が「訴訟リスク、差止請求リスクがある」と言うところを、「訴訟リスクの潜在的経済的損失よりも我が社が経済的に享受できるものが大きいです」と100%会社側に立って意見を言えることが経営上は重要です。

高名な弁護士の言うことを聞いても、その弁護士がその後の経営をしてくれるわけではありません。経営において法的リスクばかり気にしていたらグーグルは絶対に生まれなかったことでしょう。「Googleの脳みそ―変革者たちの思考回路 」は是非ともインハウスの法律家に読んでもらいたい本です。

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