弁護士、弁理士はこれから食えますか? 【キャリア相談 Vol.18】

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まず①の弁護士・弁理士を取り巻く環境ですが、各メディアが喧伝するように世の中に先生達は余っているといえます。

いったん弁護士に話を絞ります。資格を取っても食べていけない弁護士を、イソ弁(他人の事務所に居候)、ノキ弁(事務所の軒下を借りるが給料は出ない)、ケータイ弁(事務所を持たず携帯で仕事をする)と揶揄されて久しくなりました。他の士業同様、資格者の数も増え、資格を取ったら安泰というのは完全に過去のものとなりました。弁護士になったら即座に年収1000万円以上という世界は、一流大学、一流ロースクール出身者またはロースクールを飛ばして予備試験に若くして受かるような人にしか目指せない世界になってしまいました。

簡単に計算してみましょう、例えば4大法律事務所という新人弁護士でも年収1000万円以上をもらえる大手事務所に所属する弁護士数をざっくり1500人とします。その中で「パートナー」と呼ばれる一般企業で言うところの役員や経営者にあたる弁護士が30%くらいとして、500人になります。

そのパートナーたちの一部には数億円プレイヤーもいます。日本における弁護士は約3.2万人程度ですので、4大事務所のパートナーになるのは司法試験に合格して弁護士になり、その中で1.5%くらいに入らないといけないことになります。筆者がこの事実を東大の3年生に言ったところ、司法試験に受かったら年収数千万円の未来が約束されていると思っていた学生は法曹志望を諦めました。

「先生」に必要なのは「営業力」

もちろん報酬面だけで言えば、「手付で1億円ね」と言う4大事務所に属さない有名弁護士や高給な外資系、「彼ら(検察官)は昔の部下達だから、まあ仲間内ですよ」と言うヤメ検の長もいらっしゃいます。しかしながらこれだけ弁護士が増えて、有名弁護士も訴訟に負けたり、ヤメ検弁護士も執行猶予さえ取れなくなってきたりしています。企業不祥事における第三者委員会設置での弁護士の受任もそんなに多くなく、なかなか法外な報酬を得ることは難しくなってきています。どんな偉い先生でも代わりがいるのが現状です。

昔は刑事事件の弁護士は会計がわからなくてもなんとかなりましたが、高度な経済事犯モノを扱うにはオプションの本源的価値の意味くらいはわからなくてはなりません。バッジ(政治家)、サンズイ(汚職)の事件に大物弁護士が登場して、落としどころを探ってという世界も今は昔です。偉い先生もトレンドにあった勉強が必要になります。

4大事務所においても弁護士を増やした結果、同じ商店街に同じ商品(企業法務、M&Aなど)を売る同じような店を各パートナーが出すことになってしまいました。そうすると同じ事務所でパートナーが顧客を取り合う事態となり、優秀な若手アソシエイトはフロンティアである海外や企業法務部への出向に活路を見出すこととなります。

また、当たり前なのですが、若手弁護士が企業法務部に出向すると、企業の中に入り込むことによって顧客と仲良くなります。そうすると、その顧客を担当しているパートナー弁護士が顧客を取られまいとガードし始めます。このように巨大法律事務所の内部は群雄割拠の戦国時代となっており、弁護士でも弁理士でも「先生」マインドから顧客志向と差別化が必要とされる過渡期にあります。一言でいうと今、士業の「先生」に必要なのはビジネスにおける「営業力」です。

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