アマゾンに掲載する広告に注目が集まる理由 熱視線を向ける広告主たち
しかし、検索広告費用が移行されることは、大がかりな計画の一部に過ぎない。Amazonは広告による収益額を公表していないが、リサーチ会社のeマーケター(eMarketer)は、今年は約3割増しの15億ドル(約1695億円)、そして2019年には24億ドル(約2712億円)に増えると予測する。一方のGoogleは2016年の売上が790億ドル(約8兆9000億円)以上、そしてFacebookは270億ドル(3兆5100億円)だと発表している。
ブランドもエージェンシーも同様に、Amazonは広告で「オールイン」方式をすすめようとしていると感じている。小売ビジネスにそこまで大きな成長は見込めない。また、小売り商品の利益率は5%程度だが、広告となるとそれが20から30%になる可能性があると、財務アナリストのスティーブン・マラース氏は話す。
Amazonとしては、世界最大手ブランドのハイレベルなマーケターを求めている。ユニリーバのシニアマーケターは昨年、Amazonの担当者と会い、広告主の懸念を伝えた。その結果、Amazonはユニリーバに、測定企業のモート(Moat)を使って、2016年最終四半期にユニリーバがAmazonサイトで購入したディスプレイおよび動画広告が、100%インビューであったことを認めさせた。
この試みは、Amazonがほかの広告主とともにイギリスで行った広範なベータテストの一環だ。これは、いまとなっては、予言のように思える。わずか数カ月後、ビューアビリティが業界全体の議論の中心となったことで、GoogleとFacebookがブランドに対し、独自に広告の測定基準を検証できるよう認めたのだ。しかし、そのようなライバル他社とは違い、Amazonは広告主に第三者のベンダーを選任してキャンペーンを測定、最適化することを許可している。現在承認済みのベンダーのリストはこちらだ。
広告がより安全なプラットフォームに移行するなか、Amazonはブランドが「リスクあり」と判断するコンテンツのない環境を広告主に提供できるため、その立場は安定している。しかし、問題はAmazonが「ウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭)」の外にあるオープンな広告取引所で購入した広告はどうなるか、ということだ。あるエージェンシーの情報では、これには依然としてリスクが残るという。数年前から顧客向けにAmazonで広告を購入している、そのエージェンシーは、次のように語る。「Amazonが自社サイトで顧客のための広告を出す場合、彼らは本当にいい仕事をしてくれる。しかし、それらの広告がサイト外に表示された場合、ほかの広告ネットワークと同様、疑念とともに扱われるべきなのだ」。
パブリッシャーへの脅威
クリエイティブブティックのジェリーフィッシュ(Jellyfish)でグローバルディスプレイ担当シニアバイスプレジデントを務めるジェームス・ボルネール氏はこの点を広くとらえ、Amazonがサイト外広告に参入することで、パブリッシャーの広告シェアが奪われるのではないかと案じている。 「Amazonは大掛かりな手法で裁定取引(アービトラージ)モデルを再燃させるのだろうか? 彼らが可能な限り安い価格で入札者からインプレッションを購入するため、コンピューティングとデータ力を投入する見事な手腕を発揮することは間違いない。これが伝統的なパブリッシャーにとって真の脅威となるのか?」。