すなわち、投資家は気分によって左右されるため、今は、消費税引き上げできなければ日本売りするよ、と言っていても、いざ引き上げが延期になったときに、必ず売るかというとそうとは限らない。
むしろ、みんなが売れば売る可能性はあるが、みんなが売るとは限らない。しかも、国債に関しては、もともと非合理的な投資行動の結果として(私は、限定合理的投資家による国債の買い、と位置づけているが、ここでの限定合理性については、拙著「ハイブリッド・バブル」参照)、日本国債は、生保や中小の金融機関あるいは、政府系(あるいはかつての政府系)金融機関が、安定した買いを入れているのである。また彼らは、他の投資家の行動や市場での評価に対して、他の投資家よりもセンシティブでなく、反応するインセンティブが弱いので、多少の売り浴びせに対しては、割安だとして絶好の買い時と捉え、買いを入れてきた。
この結果、海外ヘッジファンドなどの空売り攻撃は、過去に失敗を繰り返してきた。今回は違う、というのは、財政破綻の可能性に関するハーバード大教授のケネス・ロゴフの言葉、本のタイトルだが(This time different:邦題は「国家は破綻する」)、ここでは、日本の国債の空売りが今度は起こり、かつ成功する、という意味だが、本当にそうだろうか。
それはわからない。
日本のほかの経済状況にもよるし、何より世界の金融市場の情勢による。世界の投資家あるいはトレーダーのセンチメント次第で、それは米国および中国の金融市場に大きく左右されるからだ。あるいはシリアなどに見られるような、地政学リスク、戦争リスク、それに米国が関係するリスクだ。
したがって、まっとうに議論すれば、消費税率引き上げの延期あるいは修正は、日本国債に対する信認が低下するリスクが高まる可能性があり、そのリスクは重いので、引き上げは延期するべきでない、ということになる。
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