全体も40代も、自殺原因の1位は男女とも「健康問題」ですが、差は男女間で顕著です。女性の場合は6割以上と圧倒的に「健康問題」で自殺する人が多いのに対し、男性は全体で約42%、40代では約36%程度です。一方、男性で2位である「経済・生活問題」は女性だとかなり低い。「勤務問題」についても、女性だと10%にも満たないのに対し、40代男性は16.1%と、構成比が高くなっています。
40代男性の自殺原因をさらに詳しく見ていきましょう。「健康問題」では、「身体の病気の悩み」ではなく「うつ病などの悩み」が1位です。構成比で50%弱を占めます。ただここで注意したいのは、だからといって、この統計だけではうつ病と自殺に因果関係があるとは断言できないということです。自殺者の多くがうつ病を患っていたのは事実ですが、うつ病だから自殺をするとは決め付けられません。
「経済・生活問題」では、「負債」が多く、続いて「生活苦」「失業」となります。自殺者が3万人を超えたバブル崩壊後には、この「負債」を苦にした男性の自殺が圧倒的多数でした。「勤務問題」では、「仕事疲れ」「職場の人間関係」の2つで過半数を超えます。
こうして見ると、40代男性の場合、「経済問題」「勤務問題」など仕事絡みのことが自殺の大きな原因になっていることがわかります。「健康問題」にあるうつ病はそうした仕事に関する問題の結果生じたものとも考えられます。逆に、女性の場合は、ほとんど「健康問題」一択といえます。つまり、女性は「経済問題」ではほぼ自殺しないということです。
男性が「結婚できない理由」と「自殺する理由」は似ている
この結果を見て素直に私が感じたのは、「未婚男性の結婚できない理由と似ている」ということでした。
ただ、年収が低いほど男性の未婚率が高いことは周知の事実ですが、カネの問題だけが男の非婚化を推進しているわけでありません。それは全体の一要素にすぎないのです。
自殺に関しても同様です。ここで挙げられた男たちの自殺の原因動機は、あくまで自殺に至るプロセスの中の一要素にすぎません。確かに不景気や失業率が上がると自殺が増えるという相関関係はあるでしょう。しかし、好景気に沸いたバブル絶頂期の1989年の40代自殺者数は、2015年の実績よりもむしろ多いのです。
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