まぶたを失い眠れない!「硫酸攻撃」の恐怖 ロンドン警視庁管内で今年すでに282件発生
ロンドン警視庁によると、管内で発生した酸性物質を使った事件の件数は2015年に261件だったが、16年には431件に増加した。今年はすでに282件発生している。
発生件数が増えている理由についてはっきりとした説明はないが、武器の取り締まり強化が始まった時期と重なる。「ツーストライクス」と呼ばれる規制により、ナイフの携行で2度有罪が確定すると、自動的に6カ月以上の禁錮刑が科せられることになった。
ロンドンに拠点を置く酸攻撃の被害者団体の代表を務めるジャフ・シャーさんは、銃やナイフは携行しているだけで罪に問われるのに、酸性物質はそうならないのは「法の抜け穴」だと指摘する。
「酸性物質の規制は適切な水準ではない」とシャーさんは語る。「もし酸攻撃を受ければ、警察は加害者が故意であったことを立証しなければならないが、それは極めて困難だ」
瞼を失い眠ることさえ困難
2014年12月のある日、自宅のドアを叩く音がして、そこからクリストフェロスさんの人生は大きく狂っていった。クリスマスプレゼントの配達だと思った彼は、普段通りドアを開けた。するとそこに立っていたのは見知らぬ男だった。「これがお前への贈り物だ」男はそういうといきなり、手にしていたビーカーの硫酸を彼の顔に浴びせた。
「着ていたTシャツは上から下まで、まるで消えていくようにぼろぼろに分解していった。そして言葉では言い表せない痛みが襲った」
クリストフェロスさんは事件当時と同じ家でいまも、妻と4歳の息子と暮らしている。
クリストフェロスさんは直ちに病院へと搬送されたが、医師は朝までもたないかもしれないと家族に告げた。その後も数週間、感染症の危険性から死の淵に立たされた。
体の他の皮膚を使って、クリストフェロスさんの顔面の90%は再建された。すでに12回ほど外科手術を受けたが、今後も受けなければならないだろうと彼は言う。
顔面の傷が収縮するのに伴って、これまでに瞼を3度失い、その度に眠れなくなったという。