悪さ重ねた少年が40代で達した質実な稼ぎ方

カンボジアで起業、コアな電子書籍をつくる

1999年 電気工事は命懸けだった。プノンペンにて(写真:クーロン黒沢)

住まいの環境も劣悪だった。近くのオーディオ店は客が来るたび街宣車レベルの音量で音楽を鳴らすが、薄い壁はそれを防いでくれない。それどころから水拭きした床を1時間でザラつかせるほどの土ボコリを運んでくる。パソコンはすぐに壊れた。

調子のいい現地の男性にたきつけられて買ったロシア製のエアコンが即座にスパークして周囲の電源を焦がしたりもした。原稿もダイヤルアップでどうにかネットにつないで納品するのが当たり前だった。何度か引っ越したが、クセのある大家との意思疎通に苦労するのはもはや基本ともいえた。

失敗もいっぱいしたけれど…

2013年、プノンペンで(写真:クーロン黒沢)

それでも対人ストレスはゼロなので、毎日すがすがしい朝が迎えられたという。現地に残った邦人とつるんで遊んだり、当時は容易に手に入った銃をコレクションしたりと何かと楽しみを見つけていたし、決してぜいたくな暮らしではないものの食うに困るという事態に陥ったこともなかった。それは絶えず新たな収入源を探す姿勢を持ち続けたことが大きい。

「ライター業と並行して、当時カンボジアで安く出回っていた物品を日本の顧客に送るビジネスをやったり、現地で日本人向けのフリーペーパーを作ったりしていました。失敗もいっぱいしましたけどね」

絶えずアンテナを張って新しいビジネスを見つけ、ライター業と合わせた複数の収入源を確保する。日本にいるときと同じスタイルを貫いた。それは結婚して家庭を持ってからも変わっていない。

「どんな形でも働いていないと不安なんです。家庭が貧乏だった子ども時代のトラウマかもしれません。遊んでいるときも頭の中では仕事のことばかり考えている。忙しくしているのがいちばんの精神安定剤になるんです。予定が何もないと苦しい。特に若い頃は、寝るときも次何やろうかと考えながら寝るような感じでした」

趣味にしろ遊びにしろ仕事につながる可能性がないと熱中できない性分のため、ビジネスがうまくいってまとまったおカネが入っても、どこかにバカンスに行って羽を伸ばすという選択肢はない。何もないときは、集中して打ち込める唯一の趣味である麻雀でひらすら時間を潰した。特異なことが起こったら記事にしておカネにできるライターという職業は、相当プラスに働いたはずだ。

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