悪さ重ねた少年が40代で達した質実な稼ぎ方 カンボジアで起業、コアな電子書籍をつくる

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ごみの最終処分場。2000年、プノンペン(写真:クーロン黒沢)

内戦が治まったあとのカンボジアは安定して発展しており、外国資本のみで起業できることや収益の持ち出しに規制がないこと、日本からも補助金がもらえる仕組みがあることなどから、近年は起業先として日本からも注目されている。実は『シックスサマナ』も、当初はそうした日本人実業家をターゲットに始めたビジネスだった。

「最初は日本人向けにカンボジア情報を載せるサイトでした。でも、1年くらいやっていて全然儲からなくて。ならば有料メルマガにして稼ぐモデルをと考えたところ、ちょっと割に合うものがなくて、最終的にアマゾン・キンドルに行き着きました」

電子書籍なら印刷代がかからず、在庫リスクも抱えなくて済む。また、アマゾン・キンドルなら著者印税が最大7割(一般的な紙の本の印税の7~9倍以上)確保できることも大きかった。誌面の体裁を整えるためデザイナーだけは外注したが、当初は周りの知人友人を頼ったりして、なるべくコストを抑えた。

そうして作られたのが2013年5月発行の創刊号だ。第1特集は「海外移住促進月間」。当時のコンセプトの真ん中を突いている。雑誌の内容紹介文には黒沢さんの本音が見え隠れしていて興味深い。

< もうまっぴらだ! 我慢の限界だ! 息が詰まる、ストレスたまる。チェーンソーを振り回し、新橋駅で暴れまくるスーツの通り魔が明日現れてもおかしくない、閉塞しきった日本社会。早く楽になればいいのに……。残された長いようで短い人生、自分らしく、幸せに生きる権利は誰にでもある。方法もある。しなければならないのは決断だけ。でも。そんな……?

煮え切らないあなたの背中をそっとやさしく押す、とっておきの一冊。人間だって所詮は畜生。そんなにがんばらなくったっていいのです。一発逆転を目論むはぐれサラリーマンから、日本に希望を失いかけたアラサー女子まで──。

読者を選ばない人生再インストールマガジン「シックスサマナ」>

(※改行は筆者による)

面白いものを優先して記事を組んでいったら…

初回は300部強しか売れなかったが、当時は隔週で発行しており、売り上げは右肩上がりによくなっていった。バックナンバーを売り続けるスタイルのため、最新号を購入した人がファンになって全号をまとめ買いするということもあった。目標は特に設けていなかったので「目標どおり」というわけではないが、狙いが当たったのは確かだ。

「私はだいたい2カ月後くらいのことしか考えていなくて、状況に応じて動いているんですよね。だから『シックスサマナ』も『こう持っていきたい』というのはなくて、面白いものを優先して記事を組んでいったらだんだんコンセプトがずれていきました。今は海外移住なんてどうでもよくて、『面白い人がいるよ!』とひたすら叫んでいる感じです」

2017年8月現在の最新刊は29号。売れ行きは「毎月出せたら余裕で食べていける」レベルだという。しかし、最近は2~3カ月に1回ペースに落ちているため、単独ではまだ厳しいそうだ。

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