外銀への出資は事業の補完関係を重視する−−永易克典・三菱東京UFJ銀行頭取

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--今後も海外金融機関への出資はありますか。

それは当然ありうる。ただ出資というとM&A的な色彩が強いと想定されるが、そうではない形がメインになるだろう。形をつけるため15%以上の出資比率にすると持ち分法の対象になって嫌われることが多い。それよりも、アライアンスをつけて、地域や業種の広がり、商品ラインなどでWin‐Winの関係になって商売を伸ばしていけるようなプレーヤーと一緒にやっていきたい。豪州のチャレンジャー、マレーシアのCIMB、香港の大新金融集団なども、出資比率の15%とか40%とか51%への引き上げを狙っているわけではない。

結果として相手先から要請があるなら考えるが、それを取って、彼らが稼いでいる収益を連結して増やすつもりはない。一緒に商売を伸ばしていくことで、双方に収益を生む、といった形でやっていきたい。

--最大の注目点は、サブプライム問題で傷を負った資本不足の欧米大手銀への出資があるか、です。

よく聞かれるが、それはありうる。ありうるが、出資そのものがメインではない。アライアンスがびっしりついて両方が補完し合える関係になるなら意義のあることだ。ただ現在は(欧米銀が)全体的に弱っていて資本が欲しい、そして9%とか10%の配当がつく、というパターンがある。これを狙って出資していくシナリオはわれわれにはない。

--欧米大手銀行から出資要請の話が、かなり舞い込んでいるのではないですか。

この半年以上、1年近く、そうした話は浮かんだり消えたりしている。ただ非常にスピードを要する。投資銀行が介在したりするので、本当のところや直近の状況がよくわからない。その中で本当にスピーディに1000億円、2000億円、3000億円といった資金を出す決断ができるか。オープンにしてもらえれば可能性はないことはないが、こちらの気持ちとしては、この資金がどう生きるのかを固めたい。そうなると、けっこう交渉に時間がかかる。昨今のような、3カ月ごとの決算を締めて大変だから出資云々というのには間に合わない。そういったスタンスの出資は好ましくない。もうちょっとどっしりした、がっぷり四つでやっていける、その一助としての出資なら意味がある。

--北米戦略はどうなりますか。

ご存じの通り、北米では昨年、行政処分を受けた。これを受け一生懸命に内部管理体制を見直し強化している。この問題を払拭できればFHC(金融持ち株会社)の資格取得を申請できる。できるだけ早くこれを取得したい。これを取得すれば資本を有効に使えるし、メジャープレーヤーとのしっかりした資本提携などの可能性も拡がる。

--繰り返しになりますが、その後に大手米銀と大胆な戦略的提携を描いているのでしょうか。

株が売られて欧米銀行の時価総額はどこもかなり落ちてきた。それが早期に苦境を抜け出るのか、なかなか判断しがたい。証券系の決算はまだ決してよくない。あれで抜け出したとの評価はできない。銀行系の決算もみてみたい。サブプライム関連は相当処理したので、これ以上、大きく拡がることはないだろうが、証券化商品は非常に広がりがある。かつクレジットコストが相当、上昇してきている。カードの問題、ローンの問題などに相当影を落としてきている。しかも原油価格があれだけ上昇し、自動車や一般消費財など物が売れなくなっている、

米国の成長率はゼロ%台に落ちてきている。米国経済が年央にも回復に向かうシナリオはなかなか考えづらい。そうなると(投資も)慎重に考えざるをえない。第2四半期もかなり苦しいのでは。それが第3四半期に急速に回復する見通しはなかなか出ないだろう。米銀のメジャープレーヤーも、今年いっぱいは苦しい時期が続く可能性がある。何かあるとまた資本に返ってくるのでは。

したがって、(出資の)チャンスと考えるのならチャンスは依然として続くとも考えられる。安けりゃ買うというわけではない。本当のエッセンスは出資が有効に経営を左右し、アライアンスを組んで補完できるものは補完し合ってやっていくことだ。信頼関係と補完性が大事だ。組めるならば、真正面から勝負ができる案件があれば、検討はする。アジアに限ったことではない。ただ、それがすぐウエーティングサークルにいるかといえば、正直、ありません。

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