外銀への出資は事業の補完関係を重視する−−永易克典・三菱東京UFJ銀行頭取
国内メガバンクの欧米大手銀への出資が相次いでいる。今後の最大の注目は、三菱UFJフィナンシャル・グループの動向だ。みずほコーポレート銀行のメリルリンチへの、三井住友銀行の英バークレイズへの出資に続き、同グループも欧米メジャープレーヤーへの出資や資本提携があるのか否か。4月に頭取に就任した三菱東京UFJ銀行・永易克典頭取に、出資、買収を軸にした国内外での戦略を聞いた。
--今後の成長分野として、投資銀行業務、リテール、海外の3分野を挙げています。
リテールと投資銀行業務はその内容が変わってきており、今後、期待できる分野という意味だ。リテールでいえば、従来、個人は圧倒的に預金の出し手だったが、住宅ローンに加え、消費者金融、カード、投信、年金保険などカネの借り手や運用資金の出し手としても登場するようになってきた。その動きが、この5年で顕著になってきている。トータルのマーケットが拡大しているわけではないが、ビジネスチャンスは非常に増えてきている。
投資銀行部門は欧米では同部門にあらずんば人にあらずというほど収益力があった。ところがサブプライム問題が飛び火している。
投資銀行部門は非常に金融ハイテクを使う、あるいはM&Aの世界をみると時代の大きな流れでもあるし、そういったものにコミットした商売を行っていく。エクイティにしても何にしてもプライマリーの世界は非常に華やかだが、実はセカンダリーの世界、ここに介在することで大きなビジネスチャンスがある。
海外は、特にアジアを中心に成長のスピードが速い。パイ自体が拡大しており、ここにビジネスチャンスを見いだすのは当然だ。
今後、数年を展望した場合、やはり、この3分野あたりが成長分野になる。他の分野を無視するということは全然ない。着実にやっていくが、伸びる分野、伸びの中心はそのあたりが中心になっていくだろう。
--アジア各国で、出資を含めた地元銀行との提携が活発です。中国では拠点を増やす動きもあります。
中国に関しては現地法人化している。中国国内だけでもエクスポージャーは1兆円弱ぐらいあり、外銀としてはナンバー1だ。派手さはないが、商業銀行としてのプレゼンスやパフォーマンスは非常に高いものがある。これをベースに現在の11拠点を早く15拠点ぐらいにはしたい。5月に現地に行ってきたが、年10%という強力な成長を実感してきた。ほかでもアジアでは香港、シンガポールも良好な環境だ。ほかのASEAN諸国や豪州、次にはインドという巨象も控えている。そして中東、カザフスタンなども魅力的だ。欧州でいえば、旧東欧やロシア。こう考えると、商売のネタ、ビジネスチャンスは非常に豊富だ。そういったところでプレゼンスを伸ばす必要がある。
邦銀もようやく海外展開しても大丈夫な状態になりつつある。われわれもグローバルベースで稼いでいく。上場している大手メーカーなどに比べ、まだまだ低いが現在17%の海外比率(業務粗利益ベース)を早く20%にしたい。