大衆薬のロート製薬が「再生医療」に挑むワケ 「肌ラボ」や目薬製造の技術も活用
治験を始める新薬は、他人の脂肪から取り出した脂肪由来の幹細胞を培養、精製して作り出す。これを患者の静脈に点滴すると、硬くなった細胞を溶かして肝臓が自ら再生しようとする能力を高める。
美容整形で廃棄される余剰細胞を活用
この脂肪由来の幹細胞は、さまざまな再生医療への応用が期待される間葉系幹細胞という細胞に属する。これまで間葉系幹細胞は、主として骨髄系が使われており、原料を海外からの輸入に頼っていた。しかし脂肪由来の幹細胞ならば、国内での調達が容易だ。脂肪由来の幹細胞は、美容整形などで廃棄される余剰細胞から採ることができるからだ。
これならば、日本人の間葉系幹細胞を使った製剤として初めて製品化を目指すことができる。国内で原料を調達できる分だけ早期の治療が可能になる。また、他人の細胞を使うので免疫拒絶が心配されるが、脂肪由来の幹細胞では免疫拒絶が抑制されることもわかっており、免疫抑制剤を使わずに済むメリットもある。
ロート製薬がいきなり再生医療に挑戦する意味はほかにもある。スキンケア化粧品を扱う中で細胞を扱う技術に慣れていること、目薬の製造工程での無菌化製剤技術を磨いてきたことなどだ。つまり、自らの強みを生かすことができる。
治験は共同研究を進めてきた新潟大学の寺井崇二教授が実施する。すでに7月27日から、患者の募集を開始した。今回の臨床試験は肝硬変患者の15人が対象。1患者につき1回のみ投与し、7~8カ月かけて経過を観察する。
治験は2年程度で終了する計画で、2020年には早期承認(条件付承認)の取得を目指す。ただ、販売についてはロート製薬独自ではなく、「パートナーと一緒にやりたい」(山田会長)と、販売パートナーの獲得が当面の課題になる。
現時点では中等度の肝硬変患者が対象だが、「慢性肝不全の急性増悪など、より重症度の高い肝硬変や、消化器系の炎症性慢性疾患など根治治療法のない病気への適応拡大は可能」(寺井教授)。逆に軽症のうちから治療に使えるようになれば患者のQOLも上がり、医療費総額を抑えることも可能になるかもしれない。
再生医療市場は2030年には世界で10兆円を超える産業になると予測されている。ロート製薬がどこまで食い込めるのか、今回の治験はその試金石になる。
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