あなたが知らない児童労働の過酷すぎる現場 劣悪な環境に置かれる1億6800万人の子供
岩附:ガーナで一つ人身売買のケースがあって。遠くから北部から連れてこられて、カカオの農作業と牛追いのような家畜の世話を任されていた二人の子供たちを救出したことがあります。その子達は「学校に行かせてあげる」と連れてこられたけれど、実態はずっと労働で。しかも「仕事をしないとご飯をあげないよ」と言われているので、仕事をしないといけない。体調も悪いけれど、それも聞き入れられない。言葉もちょっと違うし、連れてこられているから自分では帰れないし、どうしようもないという状態で。私たちがインタビューの最後に「何か私たちに聞きたいことある?言いたいことある?」と聞いた時に、「今すぐここを抜け出したい」と言ったんです。それが本当にその時のこの子の気持ちだなと思って、これは何とかしなければならないと、そこからいろんな人に働きかけ、警察も動員し、結局その子達を救出しました。私たちが勝手に連れていくと別の誘拐みたいになってしまうので。そういう風に「誰かに何とかして欲しいんだけど、自分ではどうしようもない」という状況にいる子って多分すごくたくさんいて。そういう声がどこにも届かなくて、だんだんそのうちに本人が「これしかないんだ、しょうがないんだ」と諦めていく、そういう構造なのかなと思います。
堀:そういう産業構造の上に私たちの生活が、豊かさを享受する生活があると思うと、全く無意識でいてはいけませんよね。
岩附:そうですね。普段目にしないので、そこまで深く考えられないと思うんですけど、ものをたどって行くとそういう現場があるということは知って欲しいです。しょうがないではなくて、やっぱりそこに何かできることがあると思っていて。今企業も自分たちのサプライチェーンの中にそういう課題があるということに気づいて行動を起こそうとしているので、そういう風に行動を起こしている企業を消費者も評価するということもできますし、そういう商品を選ぶということもできます。全部はできなくても、企業が何か変化を起こしたいと思っても支援がないとなかなか踏み切れないので。みんなが消費者なので、その一人一人ができることっていうのが必ずあると思います。一人一人が現地に行って助けることはできなくても、ACEや児童労働ネットワークに加盟している団体もそれぞれいろんな支援をやっていますから、そういった団体を応援してもらうというのも一つの方法だと思います。
堀:児童労働という言葉が少しずつ社会に認知はされるようになって。フェアトレードとかエシカルとか、ああいう言葉もたびたびメディアで登場するようになりましたけども、実際にそういう中で子供たちが健康被害にも晒されて、人権の問題ももちろんあってということがまだまだ伝わっていないというのも、変えていかなければいけないですよね。