あなたが知らない児童労働の過酷すぎる現場 劣悪な環境に置かれる1億6800万人の子供
岩附:そうです。あるいは、親御さんが亡くなってしまったとか、離れ離れになってしまったとか、そういう状況の中で「いい仕事があるから」と騙して連れて行くとか、そういう事例がこれまでもあったので。ネパールの地震の時も、人身取引を監視しているNGOがいつも行っているコンタクトポイントで、地震直後の方が介入して救出する子供が増えたそうです。
世代を超えた悪循環を生む、児童労働の現場
岩附:児童労働をすることが実は大人になってもdecentな(ちゃんとした)職に就けない、人間らしい働き口を見つけられないでずっと搾取されたまま続いてしまうということもあります。実は、子供たちが働いている親御さんもインタビューをすると、その人たちも子供の時から働いていて。でも40代くらいで体がボロボロになるんです、農作業とかやっていると。腰が痛くて自分はもうできないから子供にやってもらうしかないんだという親御さんもいて。そうするとその児童労働の循環が世代を超えて繋がってしまって。貧しさとともに、世代を超えた悪循環が繋がってしまうという現状が生まれていると思います。
堀:今従事させられている子供たちも、そのまま過酷な低賃金の劣悪な環境での労働がずっと続いていくということですか?
岩附:そうですね。ACEが介入していくと、実は子供を雇うのをやめてきちんと大人を雇うようになったというコットン畑の事例があります。我々ACEとして「インドのコットン畑の児童労働をなくそう」というプロジェクトをやっていて。インタビューすると、やはり子供の方が値段が安いんです。その理由は、子供は交渉をしないで言い値で働いているということ。実は、コットン農場の場合は3ヶ月とか一定期間の間集中的に、タネとタネ、雌しべと雄しべを擦り合わせて人工交配をさせるというのを、遺伝子組み換えのハイブリッド種のコットン畑では行います。その時にはたくさん労働力が必要です。それを雇う側の農場の持ち主もそれほど豊かではないので、なるべく労働コストを抑えたい。子供が雇われる時って、前借りみたいな形で前金を払われている時があって。親に結構大きな金額の前金を払うんです。そうすると、そんな金額を一度に手にすることはなかなか難しいので親は受け入れてしまう。そうすると、働いている間ずっと最後まで働かなければならない契約になってしまうという状況になっていて。そういう借金のかたに働くというのを債務労働というんですけど、そのような形も見受けられるんですね。