太陽光パネルは発電効率、コスト面で競争力を確保−−新美春之 昭和シェル石油会長

拡大
縮小


--急ピッチな原油価格上昇の影響で石油精製・販売事業の収益が悪化しています。

確かに極めて厳しい状況です。原油価格が当初の予想よりもはるかに高止まりし、給油所への価格転嫁に際してタイムラグが生じて、販売店でもマージンが縮小しています。

特約店ではクレジットカード利用者による売り上げが多いことによる影響も出ています。カード会社に対してはマージンではなく、(ガソリンなどの)売り値に対し一定割合の手数料を払わなくてはならないため、利益を圧迫しています。

昭和シェルの今12月期の経常利益は原油高に伴って在庫評価益が膨らむため、見掛け上は過去最高の規模になりますが、カレントコスト(真水)ベースでは逆に減益になる可能性が大きいと見ています。

--原油価格の高騰は、非在来型の資源や再生可能エネルギーなどの開発を催促している、との見方もありますが。

一面では事実でしょう。産油国であっても販売価格の予測は難しい。だからこそ、探査や採掘に関するコストを保守的に見積もっていた。その結果、開発や探査の技術進歩が遅れたとの見方があるのは確かです。

ただ、新しい技術開発がなされれば、原油や天然ガスの価格上昇にブレーキがかけられるかというと、必ずしもそうとはいえません。エネルギー需要の拡大や、環境面から使えるエネルギーに制約がある、という二つの要因を念頭に置くと、たとえ石油や天然ガスの採掘技術の発達や投資の拡大、さらには太陽光発電の普及などがあっても、石油に対する需要を大幅に緩和するには至らない。あらゆるエネルギーをかき集めてやっと、需要を賄うのが精いっぱいでしょう。原油価格の上昇圧力はそう簡単に解消へ向かうものではないと考えています。  

金融資本の肥大化を考慮に入れなければ、原油価格は1バレル=80ドル前後が適正との見方もありますが、実際に肥大化は起きています。加えて、家電製品や自動車の普及など日本が歩んだ道を新興国がたどっている。需要増は恐ろしい圧力です。

アルバックと連携して量産技術確立を目指す

--太陽光発電パネルの大型投資計画があると伺いますが、そもそも研究開発へ傾注した経緯は。

太陽電池の研究開発は、(1985年に旧シェル石油と合併した)旧昭和石油の時代から手掛けています。日本の石油会社では唯一、これに取り組んできました。ただ、3年ほど前までは商業ベースで成り立つのかという疑問がありました。

しかし、ドイツを中心とする欧州各国政府の対応や普及のスピードを見て、「ビジネスとして成立する」と判断。05年の終わりから06年にかけて本格的に乗り出し、07年7月には宮崎県の第1工場で商業生産開始に踏み切りました。

現在は第2工場を建設中で、09年夏には本格的な商業生産に入る予定です。生産規模は2工場合計で80メガワット。世界的レベルでは小規模ですが、商業ベースとしては認知されるに十分な水準と見ています。その次は規模のメリットを追求しようと、生産量を1000メガワットまで引き上げることを検討しています。

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