太陽電池育成は、天理工場建設以来のビジネスモデル転換だ--町田勝彦・シャープ会長兼CEO
太陽電池世界首位から陥落したシャープは今、シェア奪回に向け、文字通り社運を賭けた挑戦を始めようとしている。その全貌を町田勝彦会長に聞いた。
--この2~3年で太陽電池業界に起きた変化をどう見ていますか。
原油高騰や二酸化炭素排出問題、新興国での電力消費量の急増などいろいろな要因が複合的に重なり、われわれが考えていたよりも早く太陽光発電にスポットライトが当たった。日本で育った太陽電池が産業として飛躍するチャンスではあると思います。
ただし、今のソーラー業界はバブルとも言える異常な状況。欧州の固定価格買い取り制度による需要を当て込んで、今までこの業界と縁もゆかりもなかった企業がこぞって太陽電池メーカーを名乗り始めた。そもそも、太陽電池というのは、屋外の厳しい環境下で長期間にわたって安定的に発電し続ける必要がある。だからこそ、家電製品以上の長期信頼性と高い品質が要求されるんです。ところが、今は需給が逼迫しているから、何の実績もないような企業が作ったソーラーパネル(太陽電池)でもお構いなしに高値で売れている。まったくおかしな話だ。
--バブルである以上、いずれは、はじける?
はじけるでしょうね。私は固定価格買い取り制度の趣旨は評価されるべきものだと思う。しかし、この制度の下では、実際の太陽光発電システム導入量が増えれば増えるほど、電気料金などの形で社会負担も増す。それを世論が許すのかと。
実際、先鞭をつけたドイツは買い取りレートの引き下げ幅拡大を決めたし、スペインも大幅な引き下げを検討している。こういう話は雪崩現象を起こす可能性もある。買い取り価格が下がれば、今みたいな投資対象として太陽光システムを導入しようというブームは沈静化する。常識で考えても、こんな異常な状況は長くは続かない。
本当の意味での競争が始まるのはこれから