太陽電池育成は、天理工場建設以来のビジネスモデル転換だ--町田勝彦・シャープ会長兼CEO

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実際、今年5月には、イタリアの電力会社エネルとパートナーシップを交わしました。イタリアは水力発電がメインだが、最近は水源が減って困っている。そこでエネルは2011年までに複数の太陽光発電所を造りたいと。将来のエネルギー確保は、世界各国が共通して抱える課題。太陽光発電のコストが下がっていけば、将来的には、太陽の光に恵まれたサンベルト地帯の各国で大規模な太陽光発電所の建設が相次ぐだろう。長期的な視点で太陽電池の需要を考えた場合、やはり本筋はそうした政府、電力会社によるインフラ投資ですよ。うちが主戦場として考えているのもそこです。

--どのメーカーもその市場を狙ってくるんじゃありませんか。

そうだとしても、実際にかかわれるメーカーは極めて限られる。国や電力会社が社会インフラとしてやるわけで、これは国民のライフラインにかかわる話。コストだけでなく、信頼できるメーカーの太陽光発電システムであることが大前提だ。しかも、発電規模が大きく、一つの施設で最低でも20メガワット、30メガワット以上の世界です。高い信頼性とコスト競争力、そして供給能力。そのすべての条件を満たせるメーカーじゃないと無理でしょう。

--そうした大型の需要をにらんだ生産投資計画は?

今、当社が正式に公表している生産能力計画は2010年で1・7ギガワット(現在は0・7ギガワット=700メガワット)。まずは堺の薄膜工場を09年にしっかり立ち上げて、ロードマップで描いたコスト、変換効率を着実に実現することが大事です。そこから先の投資スピードは、需要の動向次第で柔軟に対応する。もちろん、各国の政府や電力会社によるプロジェクトが本格的に動き始めたら、そのときは一気にアクセルを踏み込む。今までうちの投資は液晶メインだったが、次はそれこそ太陽電池への集中投資です。

太陽電池の工場立地や運営形態という点でも、今後は変わっていくと思う。世界各地で需要が出てくるでしょうから、堺以降の工場は海外がメインになる可能性もある。一定の規模が満たせれば、需要のある地域ごとに工場を造りたい。その際には、単独という形にはこだわらない。むしろ、現地の電力会社と共同で運営していく形が中心になるでしょう。

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