トランプ大統領は自分自身を恩赦できるのか 大統領が自らを恩赦するのは前代未聞だが…

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トランプ大統領が辞任して、マイク・ペンス副大統領が大統領になって、トランプ氏に恩赦を与えるということも考えられる。いわば、それが順当というか、王道というべきだろうが、はたしてトランプ氏が辞任しなければ、再選か、否か、この先どこまで考えるかで、今後の成り行きも変わってくる。

家族を含めて考えると、大統領自ら恩赦を与えるほうがいいかもしれない。だが、もし州法などに制約されて、恩赦を与えることができないとなれば、恩赦よりミュラー氏解任が先になる可能性が高まる。

ミュラー氏解任のタイミングはいつか

ミュラー氏解任説はいまに始まったことではない。6月中旬、ミュラー氏がトランプ大統領を司法妨害の捜査対象にしていると報じられた直前、トランプ大統領によるミュラー氏解任説が流れ、そのリベンジでトランプ氏にターゲットを絞った司法妨害捜査に打って出たというのが定説となっている。

その時、ミュラー氏解任を止めたのは、メラニア夫人とラインス・プリーバス首席補佐官といわれている。プリーバス氏は共和党全国委員長時代からポール・ライアン下院議長と親しく、共和党主流派の人物として知られる。

プリーバス首席補佐官の考えでは、その時点でのミュラー氏解任は、オバマケア代替法案など重要法案を審議する議会へのダメージが大きいと判断があったからだろう。その状況は今もあまり変わっていない。

そのミュラー氏解任のダメージを緩和ないしコントロールすることは、はたして可能なのかどうか。それはいったい何か。どんなタイミングか。

現実的に考えられるのは、北朝鮮カードだ。トランプ政権は北朝鮮に対して、軍事力行使を含めて、あらゆるオプションで制裁圧力を強めると警告してきた。それを無視するかのような北朝鮮のミサイル実験、その暴走ぶりに、いまや米軍首脳陣の忍耐の限界に近づきつつある。

その北朝鮮カードについては、本欄「トランプ大統領に『一発逆転戦略』はあるのか」で詳述した。米朝の軍事的緊張がいつ高まってもおかしくない状況で、場合によっては、中国ないしロシアの仲介によって、北朝鮮が核・ミサイル開発の凍結という大きな譲歩に転じる可能性もまったくゼロではない。

そんな米国民の愛国心が外に向かっているタイミングであれば、ミュラー氏解任のダメージはかなりコントロールされる。そもそもミュラー氏の働きがどれほどのものか、米国民の評価が高いとは言えない。トランプ大統領の一挙手一投足に目が離せない。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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