ドナルド・トランプ米大統領にとって、いま戦う相手はロバート・ミュラー特別検察官に絞られている。そこのところをしっかり押さえておきたい。ここへきてミュラー氏は、トランプ大統領を司法妨害の捜査対象にし、大統領弾劾に追い込もうと意図している。
ウォーターゲート事件で弾劾の可能性が高まり、辞任に追い込まれたリチャード・ニクソン元大統領も、さらに女性スキャンダルで弾劾寸前にまで追い込まれたビル・クリントン元大統領も、いずれも弾劾容疑は司法妨害だった。
いったいこの2人の勝負はどうなるのか。筆者は1980年代からウォール街で弁護士として仕事をしてきた。その経験から、今後の勝負のポイントを大胆に分析していきたい。
ミュラー氏の「広報戦略」がかえって裏目に
司法妨害の疑いでトランプ大統領を捜査対象にするという情報は、ワシントンポスト紙(6月14日付)によって報じられた。これはミュラー特別検察官サイドがとった、いわば「広報(PR)戦略」である。法律家が事案を有利に運ぶために使う論点の1つだ。
その効果には、プラスもあればマイナスもある。ミュラー氏を超一流のエリートとして尊敬する米メディアでは、ロシアゲート疑惑捜査の流れをミュラー氏が変えた、「うまくやった」とプラスに評価されている。
実は、ワシントンポスト紙報道の直前にミュラー解任説が流れ、そのリベンジとして、トランプ氏を司法妨害の捜査対象にしたという側面がある。これはミュラー氏側にとって正しかったのか。トランプ流の自分勝手さに、ミュラー氏側が感情的になって突進したとすれば、決してプラスになったといえない。
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