米国憲法の原型は、1776年の独立宣言から12年後の1788年に制定された。その時点での憲法はもともと米国における奴隷制度を前提としていた。そのため、条文にも何かと不具合があり、いわば未完成品だった。そのため修正条項が加えられてきた歴史がある。
余談だが、日本の現行憲法改正をめぐって、米国憲法が何度も修正されてきたことと比較する議論がある。その比較はナンセンスだ。奴隷制度を認めていただけでなく、いまだに男女平等などを含む「平等権」条項を加えるという「憲法修正」さえ果たせていない。
そんなありさまのまま現在に至る米国憲法と日本の現行憲法とは、まるで月とスッポンほどの違いがある。
ミュラー特別検察官の越権行為に対する報復
今回、トランプ大統領はなぜ自らの恩赦を考えるにいたったのか。それは、ここへきてロバート・ミュラー特別検察官による、「ロシアゲート」追及が一段と厳しくなってきたことを、トランプ大統領がかぎつけたからではないか。
ミュラー氏は連邦捜査局(FBI)の元長官であり、この5月にトランプ大統領によって解任されたジェームズ・コミー前FBI長官の上司だった。ミュラー氏は、直属の部下だったコミー氏への思い入れがある。法律家の世界では、運命を共にするという意識が強い。解任されたコミー氏の代わりに、トランプ大統領をやっつけたいという気持ちも強い。トランプ大統領がその点を気にしていることは、100%確かだ。
ミュラー氏のターゲットは、当面、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏と娘婿ジャレッド・クシュナー氏だが、つい最近の上院での非公開の証言で、クシュナー氏はロシア政府との共謀を否定している。今後、その共謀をめぐる追及の延長線上に、トランプ大統領が入ってくるのかどうか。それが弾劾に結び付くのかどうかが焦点となる。
ミュラー氏の捜査・追及の本筋は、昨年の大統領選挙戦をめぐるトランプ陣営とロシア政府との共謀疑惑だが、これまでの上院の資料だけでは、あるいはトランプ・ジュニア氏やクシュナー氏の追及だけでは、最終ターゲットであるトランプ大統領を倒せないと、ミュラー氏は踏んでいる可能性は十分ある。
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