日本人の「短い睡眠」が危険領域に入ってきた 価値観やライフスタイルを変える必要がある
日本人の平均労働時間は7.2時間となっている。ハードワークで知られる米国は日本より長く7.5時間だが、ドイツは5.7時間、フランスは6.1時間とかなり短い。一方、日本の労働生産性は先進国の中では突出して低く38.6ドルしかない。米国(58.4ドル)、ドイツ(60.2ドル)などと比較すると3分の2である。
統計学的に厳密な計算ではないが、睡眠時間と労働生産性の相関係数を取ってみると0.8という、かなり高い数値が得られた。仕事を効率よく進めることは、良質な睡眠につながる可能性が高い。
時間の使い方で日本人に特徴的なのは、上記のように労働時間が長いことに加え、通勤時間が長く、家族や友人と過ごす時間が短いことである。一方、食事の時間は意外と長い。
例えば米国人は日本人と同じくらい長時間労働だが、労働によって生み出される付加価値は日本の1.5倍もある。基本的に付加価値の差は年収の差と思えばよいので、米国人はハードワークする代わりにたくさん稼ぐというライフスタイルであることが分かる。
食事に費やす時間は日本の半分しかないものの、家族とふれあう時間は日本人の2倍近くもある。トータルすると、仕事(稼ぎ)、家族、睡眠を優先するため、食事を犠牲にしているという図式だ。
欧州は米国とはかなり雰囲気が異なっている。フランス人やイタリア人の労働時間はかなり短く、食事の時間は長い。睡眠もたっぷり確保している。一方、欧州人は米国人ほど家族との時間は確保していない。プライベート優先で、仕事もそこそこに済ませ、ゆっくりと食事を楽しむという感覚のようだ。少々、乱暴な言い方かもしれないが、この統計は、ステレオタイプなフランス人のイメージとよく符合する。
日本人は通勤時間も長い
日本の場合には長時間労働に加えて通勤時間が長く、これが自由に使える時間を圧迫している。一方、食事の時間は長く確保しており、その結果として、睡眠時間や家族との時間が短くなっているようだ(食事の時間の一部はもしかすると、会社の飲み会かもしれない)。
こうした状況を総合的に考えた場合、このところ話題になっている「働き方改革」は単に残業を減らせばよいという問題ではないことが分かる。
労働生産性は付加価値を総労働時間で割って求められるので、労働生産性を向上させるためには、分子(付加価値)を上げるやり方と、分母(総労働時間)を減らすやり方の2種類がある。しかし、両者は独立した変数ではなく、産業構造によってその関係性は変化する。