残業代ゼロ法案めぐる激論で抜け落ちた本質 高年収の専門職を時間規制対象から外す是非

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ただ、現実には「管理監督者だから残業代は支払われないので時間管理は必要ない」といったように、賃金計算のことだけを考え、健康管理のための労働時間管理の重要性を意識している会社はまだまだ少ないことは残念である。

表面的なイメージだけで決め付けてはならない

結局のところ、高度プロフェッショナル制度が過労死法案かどうなのか、ということは表面的な論点であり、どのような働き方を採用するのであれ、企業が労働時間管理の重要性を認識して、長時間労働を撲滅しようという行動を取っていくことが重要なのだということが真の論点なのである。

医学的な見地を踏まえ、「1カ月45時間以上の残業が続くと過労死の危険が高まり、1カ月だけでも100時間を超えると過労死の危険がある」などといった、いわゆる「過労死基準」も明確になっている。高度プロフェッショナル社員であれ、管理監督者であれ、この過労死基準を「絶対に」超えないような労務管理を行っていくことが必要であろう。

高度プロフェッショナル制度は廃案にすべきだ、というのが世論の大勢を占めているように見える。しかし、反対するにしても、表面的なイメージだけで「残業代ゼロ法案」とか「過労死法案」と決め付けてはならない。

高度プロフェッショナル制度が実施されていない現時点においても、残業代の不払いや、過労死が現に発生していて社会問題となっている。感情論に終始するのではなく、なぜそのような問題が発生しているのかという根本原因に光を当て、最終的に高度プロフェッショナル制度が導入されるにせよ、廃案になるにせよ、わが国の労働環境を改善させ、より働きやすいものにしていくための本質的な議論が、いずれにしても必要だ。

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