「田植え」はこれから不要になるかもしれない

コマツ・坂根正弘相談役インタビュー<後編>

コメの苗がいらないとなると、今まで苗を作っていたハウスのような設備も不要となるため、そのスペースも活用し、花を栽培するということになりました。そこで、1年を通して花を作るにはどうすればいいのか、作る花の順番を考えたりして。まあ、とにかくコマツが地方で農業の改善にかかわっただけでも、次から次へとやるべきことが出てきているというのが現状です。

だから、他の大企業も地方にある自社の事業所で自社技術と知恵を生かし地元の課題解決などに取り組めば、地方は相当元気になるはずです。コマツは決して派手でなくとも地元でできることを継続的に行っているし、これからもできることをやり続けるつもりです。幸い、地元の行政や金融機関、学校、JA、森林組合なども呼応して動いてくれています。これこそが、地方創生だと思います。

中原:コメを畑作で作ると、稲作よりも格段に安いコストで済みますからね。畑作でも味はそんなに変わらないわけだから、畑作が一般的になれば、日本のコメは国際競争力を取り戻すことができますね。そのほかにも、すばらしい成果と好循環を生み出していると聞いていますが……。

300人のOB・OGが定年後、地元で「理科教室」を開催

定年を迎えたコマツのOB・OGは地元の教育現場でも大活躍している(撮影:今井康一)

坂根:石川の間接部門は転勤族が多いのですが、一方で製造現場は地元石川の人が非常に多い。コマツは60歳の定年後は、再雇用も選択肢として設けていますが、石川の現場社員は「私はもう60歳で十分です」と言って、再雇用を希望しないケースも結構あります。コマツの賃金体系は東京も石川も同等にしており、相対的に物価の安い石川のほうが、おカネが貯まるため、定年後に金銭面を理由に働かなくてもいいし、働く自分の子どもたちに代わって孫の面倒をしっかり見てあげる余裕もあるので、小松市の親子3世代の同居率は22%にもなっています。

だけど、60歳で定年して何もやらなかったら、健康寿命が短くなってしまいます。だから、定年後のOB、OGにやりがいを提供する場所としてコマツの研修センターを有効利用しようとしたわけです。研修センターは本来はコマツ社員の教育をする場所ですが、地元の子どもたちのために理科教室、モノづくり教室を開催するようにしました。現在、約300人のOB、OGの人たちが、たとえば、電気をどうしたら起こせるか、重いモノを少ない力で運ぶにはどうしたらよいか、といった普段小学校では習わない教材を小学生向けに考えて教えるようにしました。

そうしたら、それが小松市の小学校5年生のカリキュラムになって。5年生は授業として、コマツの研修センターに必ず行くことになりました。OB、OGたちが入れ代わり立ち代わり、子どもたちの相手をするのですが、彼らが言うにはそれが刺激になって、以前よりも健康になったとのことです。そういえば最近、病院に行くことが少なくなったなあと。これって結構副次効果が大きいですよ。今後、これもデータで「見える化」ができたら、と思っています。

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