中原:まさに、コマツの実践している地方創生が、貴重な教育の場になっていたり、社会保障費の膨張を抑えるヒントを提供してくれているのですね。
私は地方創生のために有望な成長産業となりうるのが、「農業」「観光」「医療」の3つの分野だと思っています。日本経済を復活させるためには、これらの3つの分野を10年くらいの時間をかけて成長産業に育てることが望ましいと考えているんです。
実は、この3つの産業は密接にリンクしています。たとえば、海外の富裕層や中間層に、日本への観光を兼ねて、先端的な医療あるいは人間ドックを受けに来てもらう。そして、湯治などを含めた観光では、ご当地のおいしい日本食を楽しんでもらう。それができれば、帰国した後も、安全で品質の高い日本の農産物を食べてもらえる機会が増えるかもしれない。ひとたび日本のファンになってもらえれば、その後もたびたび日本を訪れてもらうことができるかもしれない。
こういった日本の強みを生かせる産業の組み合わせこそが、農業、観光、医療の高付加価値をさらに高め、日本ブランドを確立することにつながることになります。そうなれば、中国や韓国、台湾などアジアのライバルたちとの価格競争にも巻き込まれることはなく、賃金水準が比較的高い新たな雇用をつくり出すことができるのではないでしょうか。
農林業は技術開発とマーケティングでまだまだ伸びる
坂根:全国に共通する地方創生のテーマは、第1次産業と観光なんですよね。水産業はすでに地域により特色があるけど、農林業と観光はまだまだ全国どこでも大きく成長する可能性を持っていると思います。この国の農林業の課題は何かというと、規制や補助金によって守ろうとしてきた結果、本来どの産業でも発展するために必要であるはずの技術開発とマーケティングにあまり力を入れてこなかったということです。
だから、すでに述べたように石川の農業の技術開発ではコマツが協力し、最新鋭の自動運転技術を導入している。また、コマツは石川にある主力工場の中に使用電力9割減の新組立工場を2014年に建てたんだけど、そこで採用している省エネ技術のひとつが、冷暖房の空調に地元白山の豊富な地下水を利用するというもの。それを温室栽培にも使えるんじゃないかと試しているところです。それを見たJAの方たちもそんな優れたやり方があるのなら、自分たちでやってみようと始めるわけです。
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