「田植え」はこれから不要になるかもしれない

コマツ・坂根正弘相談役インタビュー<後編>

坂根:日本の林業の実情はもっとひどくて、世界と比べて本当に遅れています。たとえば、スウェーデンの林業は20年以上前からIT化されています。伐採する機械に「こういう木材の値段が上がっているから、それをこの長さ、太さで切ってくれ」という指令が来たら、自動で木をつかんで太さを計測し、枝払いして、切ってパイル化(束にする)します。

それを今度は「どこそこに何本パイルしてあるから取りに来い」という指令を受けたトレーラーが取りに来るのです。そのような自動化された林業がずっと前から海外では実現していて、コマツの子会社のスウェーデンの林業機械メーカーは、世界中で最新のIT技術を組み込んだビジネスをやっています。

ところが、日本だけはビジネスにはならないんですよね。残念なことに現在の日本の林業はまったくそういう次元からかけ離れています。「日本は地形が厳しいから欧米のような林業はできない」なんて言う人がたくさんいるのですが、やろうと思えばできないはずはないのです。

要するに、技術開発やマーケティングが世界的な競争で勝ち残るための必須条件なんですが、過保護にすると、こういった地道な努力をしてもしなくても自分の収入は大差ないと思うようになって、それを自らでしようと思わなくなってしまうのです。そして、最悪なことは、こういった産業に若者が興味をもたなくなることです。

規制緩和で農林業の効率化・大規模化を実現すべき

中原:その意味では、農業や林業は企業がやるべきであり、農林業従事者はサラリーマンがやるべきでしょう。たとえば、規制緩和をして企業が農業法人の50%超の株式を持つことができれば、農林業の効率化・大規模化が進み、担い手不足も解消されるのではないでしょうか。将来の日本のためには、それが正しい方向性だと考えています。

さて、医療についても坂根さんの厳しいご指摘があると思いますが。

坂根:日本の医療というのは、この数十年間でどうなったのでしょうか。確かに、日本の医師は技術レベルについては高いかもしれません。しかし、医療技術というのは、いまや医師の技量よりも医療機器や薬、そして動物由来の感染症研究などで決まってしまいます。1990年代に米国で開発された遠隔医療機器の「ダ・ヴィンチ」だとか、あるいは有名な新薬などは、ほとんど欧米で開発されています。

いまや医学部、薬学部と獣医学部の連携はもちろん、工学と理学、そして情報工学も連携した大学や研究所に変わらないと世界競争には勝てません。今、問題になっている愛媛・今治の獣医学部が52年ぶり、あるいは成田の医学部が40年ぶりに認可と、この国では既得権者が守られてきたのです。

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