リーダーの素質とは持って生まれたものか−−ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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生来の気質よりも学習で獲得した気質が重要

背が高くてハンサムな人物が部屋に入ってきて、人々の注目を引き付ける。その人物は“指導者のように”思われた--。さまざまな研究から、背の高い人物は好かれること、企業のCEOの身長は平均よりも高いことがわかっている。しかし、歴史上最も権力を振るったナポレオンやスターリン、�小平の身長は160センチメートルにも満たなかった。

個人的な特徴に焦点を当てた指導者論は消えることはなかったが、その対象範囲は拡大し、より柔軟な考え方に変わってきた。個人的な特徴は遺伝的な特徴を反映しているというよりも、個性のパターンと見なされるようになった。この定義では、先天的なものと後天的なものが混ざり合い、特徴は先天的なものというよりもある程度学習によって改善できることを意味している。

説得力に関する実験で、持って生まれた特質と学習で獲得した特質の間の相互関係があることがわかっている。実験で経営者グループは容姿のよい順に労働者を雇用するように指示された。履歴書だけ見ても容姿はわからない(編集部注:米国の履歴書は写真を張らない)。しかし、採用過程で電話でのインタビューを行った結果、経営者は応募者に実際には会っていないのに容姿のよい人が多く採用されたのである。遺伝的に優れた容姿を持って生活してきた人の自信が、電話を通して聞き手に伝わったのかもしれない。

指導力を発揮する際に遺伝的要因と生物学要因はいずれも重要だが、伝統的な兵士的指導者論が示唆するような形で指導力が決定されているわけではない。“ビッグマン”タイプの指導者は、個人や家族の名誉、忠誠心の重要度が高い部族的文化のネットワークに基づく社会では指導力を発揮することができる。しかし、現代社会では憲法や非個性的な法律といった制度的な制約が、英雄的な人物の登場を制限しているのである。

英雄的指導者に依存する社会は、現代のネットワーク社会を構築するのに必要な市民社会や社会資本を発展させることはできない。現代の指導者には出自はそれほど問題ではない。何を学習したのか、グループの一員として何ができるのかが問題なのである。先天的なものと後天的なものがお互いに関連し合っているが、現代社会では後天的なものがはるかに重要なのである。

ジョセフ・S・ナイ
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

(写真:日本雑誌協会)

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