心身を「OFFにできない人」が手放すべき欲望 頭をザワザワさせる"小人"とのつきあい方

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そうです。普段は、この「空白」の物寂しさをごまかすために、ひっきりなしに次から次に、承認欲求の刺激やドギツイ飲食や音楽や娯楽の刺激や、さらに仕事の成功や失敗の刺激を入力し続けてきたのです(それゆえ、安らぎません!)。

そうした状況に慣らされすぎているなら、「空白」の時間は初め、居心地が悪く、寂しく感じるかもしれません。けれども、ほんの数分間や数十分間だけでも、「何か好ましいもの」を追い求めない時間を持っているなら、心がホッとして、くつろぐのが段々とわかってくるはずです。

「何か好ましいもの」を追い求めていないとき、心は「今」そのものの中に休みます。副交感神経が、しっかり活動してくれ、心身ともにバランスよく休息してくれるのです。

ただし、「空白」の時を持とうとしても、頭の中には勝手に、先述の「小人たち」のおしゃべりが騒ぎ出すことも、しばしばあるでしょう。そんなときも、そのおしゃべりを止めようとムキにならないのが重要なポイントです。

止めようとすると、「静かになりたい」という欲望がうるさくなりすぎて、いっそう興奮してくるだけですから、ね。「静かになりたい!」「休みたい!」というのもまた、うるさいおしゃべりの1つにすぎないのです。

そんなわけで、「あー、今日は〇〇だったなあ」と思っても、「へー、そっちの小人はそう思うんだー」と、スルーします。「早くリラックスしたいのに、心がうるさいなあ!」と感じても、「へー、あっちの小人はそう思ってるんだー」とでも、スルーしてしまうのです。どんな考えが頭の中を通っていっていても、あるがままに、のんびりとスルーしておくのです。

ここで考えを「スルーする」と申しているサジ加減は、実は初めての方には、なかなか難しいかもしれません。が、考えにとらわれないようにする心の柔らかさは、何をするにあたっても大切なことなので、これについては、また改めて、詳述することにいたします。

欲望の侵入してこない「空白」を持つ

考えをスルーする、というのが難しければ、せめて、何もせずにリラックスしてポヤーンと、いわゆるボーッとする感じにしてみると、けっこう心が安まるでしょう。

ともあれ、こうして「こうしたい」「ああしたい」という興奮の欲望の侵入してこない、「空白」ないし、空白に近い時間が持てるなら、とっても深くリラックスして、息ものんびりスヤスヤしてくるのが、体感できることでしょう。

それが感じられれば、いつもの「休憩」が、いかに「休んでいるつもり」だっただけで、リラックスやくつろぎから遠かったのかも、と改めてわかると思います。

そして、質の高い「何もしない時間」の休息があってこそ、メリハリをつけて今度は、全力で精進できるものです。副交感神経もちゃんと活発化させているからこそ、交感神経のみが暴走することもなく、バランス良く集中力や冷静さを保って、活動することもかなうのですよ。そう、こうして交感神経と副交感神経がどちらもしっかり働いてくれてこそ、疲れることなく仕事に専念することができるのです。

小池 龍之介 月読寺住職

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こいけ りゅうのすけ / Ryunosuke Koike

1978年生まれ。山口県出身。月読寺住職。東京大学教養学部卒業。2003年、ウェブサイト「家出空間」を開設、お寺とカフェの機能を兼ね備えた『iede cafe』を主宰(『iede cafe』は2007年に冬眠)。現在、自身の修行を続けながら、月読寺やカルチャーセンター・ヨガスクールなどで一般向けの坐禅指導、講演等を行う。

主な著書に『考えない練習』(小学館)『自分から自由になる沈黙入門』『もう、怒らない』(ともに幻冬舎)のほか、『超訳ブッダの言葉』『貧乏入門〜あるいは幸福になるお金の使い方』、自身の描く4コマ漫画と解説によって仏道のエッセンスを凝縮した『煩悩リセット稽古帖』がある。

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