創業企業専門で税務・会計サービスを提供するケップル、社長の神先孝裕氏は次のように言います。
「エンジェル税制の問題点として、投資家側の減税のために、忙しい起業家側が手続きをしなければならないということを挙げる人もいます。しかし、これは税理士などの専門家を使って、起業家の事務を減らせば解決します。実際、当社ではそのようなサービスをすでに実施していますし、将来的には税制適格の判定や、手続き書類の作成をクラウドで提供するサービスを開始する予定です。投資家の方は何件も投資をするでしょうから、最初の1件からエンジェル税制を積極的に使うように意識されるとよいと思います」
地方豪族の資金を若い企業へ
47都道府県をすべて実際にまわり、創業促進や地域活性化のプロジェクトにかかわってきた、トーマツ ベンチャーサポート 地域イノベーション事業部長の前田亮斗氏は、地域にはエンジェル投資家が多く存在すると、自治体職員にエールを送ります。
「地方においても自ら事業を立ち上げ大きく育てた創業者や、ビジネス感覚に優れた後継者が、エンジェル投資家としてベンチャーに投資している事例が、実はたくさんあります。『地方豪族』ともよばれるこのような経営者の資金や信用力を若い企業にまわせば、地域の新規企業の創出は増加し、その成功確率は高くなります。景気の変動に関係なく地域の雇用を創出できるのは新規企業。エンジェル投資家の有力候補である地方豪族に、自治体の担当者はどんどん会いに行ってほしいです」(前田氏)
実際、エンジェル投資家の5割超は、経営者と役員であり、創業経営者はエンジェルになる確率が高いことが経済産業省の調査でわかっています。地域の中堅企業や中小企業の経営者は、有力なエンジェル投資家予備層。その経営資源の一部を若い企業の育成に振り向けることで、地域経済が元気になると考えられます。
地域活性化の手法は、今、大きく変わっています。企業誘致による雇用確保から、創業促進へ。草木が芽を出し、成長する環境整備を意識した「エコノミックガーデニング」という創業促進による地域おこしも注目されています。
起業家の資金調達支援は、地域における創業支援の重要ポイント。銀行融資の限界を補完する資金の流れを、エンジェル投資やクラウドファンディングなどの新しい手法で実現することは、今後の地域活性化の鍵とも言えます。
エンジェル投資をはじめとした、「温かい資金の流れづくり」に地方自治体が積極的に取り組み、民間専門家やエバンジェリストの活躍が促進され、地方豪族や地域住民の応援体制が整い、起業家やソーシャルベンチャーが次々と成長するというストーリー。地域で、創業促進と成長支援の自律的なエコシステム形成が進むことを期待しています。
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