エンジェル税制については、利用件数、金額が増えたとはいえ、全体のあるべき資金需要を考えると十分に活用が進んでいるとは言えません。
そもそも、他人から投資を受けるというエクイティによる資金調達が一般的でないという大きなハードルがあります。また、議決権のトラブルや詐欺などの悪用を防ぐため、起業家と投資家双方の投資や資本政策に関するリテラシーを向上させる必要もあります。さらに、そうした大きな観点とは別に、企業が税制適格の確認を受けるための提出書類が多く、事務手続きが煩雑であるという批判もあります。
一方で、最近では、前向きな変化も起こってきました。エクイティ投資に関する社会認識は、ベンチャーキャピタル投資の拡大や、成功したIT起業家のエンジェル投資の増加もあり、徐々に浸透してきています。それに伴ってネットや書籍での情報を通じて、リテラシーも少しずつですが向上しています。事務手続きについても、都道府県への確認事務移管に合わせて、ホームページが整備され、要件に合致するかどうかのシミュレーション、場面に応じての申請様式のダウンロードなども可能となっています。
また、何よりも税理士をはじめとする民間の手続き支援サービスが出始めており、それをうまく使うことで効果的な制度利用が期待されます。会議では、民間専門家の立場からのエンジェル税制活用のポイントの指摘や民間サービス利用の呼びかけがありました。
マニュアル本、『エンジェル税制活用術』を執筆した税理士の櫻井洋氏は語ります。
「自分の会社のオーナーシップを第三者に渡すことに抵抗のある経営者が多いことは事実ですが、最近は種類株式をうまく使う手法も出ています。エンジェル税制は、クリアすべき要件は多いのですが、会社設立前から準備し、第1期決算の前に税制適格の確認をとる方向で進めば、かなりスムーズに手続きができます。要は慣れと準備の問題。会社設立にあたり、エンジェル投資家からの資金調達を考えた時点で、エンジェル税制を考慮して準備すればよいと思います」
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