大震災から6年、今年も「福島競馬」が続くワケ 「競馬場」のある街、福島が刻んできた歴史

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5月末には原発事故による放射線量が高く、計画的避難区域となった飯舘村の人たちも受け入れた。4月の競馬開催は中止が決定した。それでも4月23日に当たり馬券の払い戻しを再開。6月25日には馬場内投票所で馬券発売も復活した。宝塚記念(阪神競馬場で開催)があった26日はわずかな窓口に約5500人が詰め掛けた。10月29日にスタンド1階と自動車専用発売所の使用を開始。発売レースも拡大し、2012年1月5日からはJRA開催の全レースが買えるまでに回復した。

9月にスタンド復旧工事に着手。安全確保のために徹底した耐震補強に取り組んだ。除染への取り組みも早かった。7月には走路部分の芝を張り替えた。ダートも砂を入れ替え、スタンド内、厩舎地区などを高圧洗浄。放射線量は問題ない数字まで下がった。2012年3月26日には内覧会も開かれ騎手たちがかけつけた。「もう競馬はできないのではないか」と関係者やファンの多くが一時は持っていた不安が一掃された。3月31日にスタンドはグランドオープン。約1年を経て、再開の準備は整った。

震災から1年あまり、福島競馬が再開した瞬間

そして2012年4月7日。春の福島競馬が開幕した。福島競馬場で競走馬が走ったのは2010年11月21日以来、実に503日ぶりだった。再開当日の第1レース。スターターが壇上に上がって赤い旗を振り、ファンファーレが鳴り終わると場内から拍手が巻き起こった。GIでも重賞でもないただのレースに自然発生で大きな拍手が起きたのだ。

筆者はスタンド前のゴール前50m付近で見ていたが、この拍手で不覚にも視界が曇った。競馬はずっと好きだが、職業の中で接していればやはり、冷静に見る部分が増えてきて、感情も自然と抑えられるようになっていく。しかし、見れば近くにいた福島競馬場の関係者も目を潤ませていた。競馬が戻ってきたことを喜ぶ温かい拍手だった。みんなが同じ気持ちだった。幸せな瞬間だった。

2012年4月7日、東日本大震災から503日ぶりに福島競馬が再開。震災のつめ跡があちこちに色濃く残る中で、多くのファンや関係者が復活を喜んだ(筆者撮影)

この日、競馬再開のセレモニーで騎手を代表してマイクを握ったのは南相馬市出身の木幡初広騎手。「1日も早く元の生活を取り戻せるように願います」とあいさつした。実家が津波で被災し、その後の父の死も乗り越えてきた木幡騎手の言葉はファンの胸を熱くした。

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