金融市場も、ほぼ同様の見方を持っているとみられ、都議会議員選挙や内閣支持率低下に株式、為替市場共に反応していない。むしろ支持率低下という「お灸(きゅう)」によって、今後政治的なハードルが高い改憲への前傾姿勢を緩めながら、経済成長率を高め、労働市場を一段と改善させる経済政策を強化する可能性が高まった、と解釈しているのかもしれない。
だが、以上の筆者の見通しのリスクになりうるのは、自民党内の動きである。安倍首相に代わるリーダーとして、国民から認識されている政治家は現状ほぼ皆無と思われるが、前回のコラムでも紹介したとおり、石破茂元幹事長、村上誠一郎元行革相など自民党の大物議員が、安倍政権による経済政策運営に批判的な立場を掲げて、勉強会に参加している。そして、都議会議員選挙後に両氏は、安倍政権に対する批判的な見解を改めてメディアを通じてアピールしている。
彼らによる安倍政権の経済政策に対する批判は、民進党など野党の見解とかなり似ており、投資家目線で見ている筆者にとっては理解しがたい。
ただ、仮に政局が混乱すれば、「妥当な経済政策で国民の経済厚生を高める」という政治の意志は二の次になり、政治闘争のためにさまざまな手段が使われうる。そうした自民党の政治家らと、金融緩和・拡張財政政策に嫌悪感を抱く経済官僚などが連携する、という展開も想定できる。
日本株に慎重になるかどうかは経済政策を見極めてから
その結果、安倍政権のポリティカルキャピタル(政治的資源)が、政治闘争に浪費されるかもしれない。ただ、2006年の第1次政権時の失敗を経験している安倍官邸は、その備えもできているだろう。筆者は、安倍政権の経済政策がこれまで一貫しているため、現在の政治情勢について悲観的ではないが、無風と思われた日本の政治動向にも一定の観察は必要とみている。
具体的な政策については、2017年末までに予想される、(1)教育国債発行などによる歳出拡大を実現するか、(2)2018年から5年間の日銀執行部の人事、によって従来の経済政策の路線が続くかどうかが判断できる。
前々回のコラムでも述べたが、官邸の指示があったのだろうが、国債残高の対GDP比率を追加目標とするなど、今後の消費増税先送りを含め財政政策を柔軟に行使する姿勢ははっきりしている。ただ、短期的に(1)が具体化するか、つまり国債発行増加を伴う大規模な歳出拡大には期待はできないだろう。2016年に実現したのと同規模の補正予算が維持される程度とみている。一方、(2)の日銀執行部人事については、現状十分期待できると考えている。
日経平均株価が2万円の大台に達して、日本株市場では一部で割高感を指摘する声がある。長期的なスパンで日本株に慎重になるかどうかは、(1)、(2)によって判明する安倍政権の経済政策を見極めてから判断しても遅くはないと考えている。
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