第2次安倍晋三政権が誕生した2012年末以降の日本の経済政策の変遷を踏まえ、日本株やドル円相場などの投資判断をする場合、非常に重要なことがある。それは、政権の政策判断に影響を与える経済学者らキーパーソンの考えを正確に理解することだ。
安倍政権は「デフレ放置経済学者」を信じていない
たとえば、2013年初までには、日本銀行による金融緩和強化を主張する浜田宏一・イェール大学名誉教授が内閣官房参与に就任した。当時同氏の発言が為替市場に大きく影響するなど、経済政策運営のレジームチェンジの象徴になった。なお、浜田氏は現在も内閣官房参与の立場にあるが、同氏が2016年後半にいわゆる「シムズ理論」(2011年にノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ氏の財政拡大論)を紹介したことは、財政政策に対する期待を高めた。
また、2016年以降、ニューヨーク市立大学大学院センターのポール・クルーグマン教授、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授ら海外の著名な経済学者を招き、彼らの意見を受け入れていることも、安倍政権の経済政策運営の特徴である。実際に、2016年に消費増税延期を提言した両教授らの意見が重視され、安倍政権は実際に消費増税延期を決定、そして補正予算の増額で、若干だが財政支出拡大が実現した。
日本の経済学者やエコノミストに限定せず、幅広く世界の英知の意見を受け入れることが、日本経済の舵取りに必要という認識を安倍政権は持っているとみられる。日本は1990年代から20年以上にわたるデフレという異常な状況が続いていた。そのため、安倍政権は、従来政策決定に携わっていた日本の経済学者らに強い不信感を抱いているのだと、筆者は理解している。
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