「東京パラリンピック」が真にスゴいその理由 五輪を超える「レガシー」生む巨大な可能性
「自動運転っていう技術が実現できたら、湘南の海をスポーツカーに乗って風を感じながらぶっとばしたいな! できればその隣にはかわいい女の子を乗せて」と、トヨタのCMでにこやかに話す、河合純一さんをご存じだろうか。
河合さんは、全盲の元水泳選手。パラリンピックでは、1992年のバルセロナから2012年のロンドンまで6大会連続で出場し、なんと5つの金メダルを含む21個のメダルを獲得。2016年には国際パラリンピック委員会(IPC)のパラリンピック殿堂入りを果たした、パラリンピック界のまさにレジェンドである。パラリンピック殿堂入りは世界でもわずか19人で、日本人では初の快挙だった。
私が河合さんと初めて会ったのは、2013年の春。パラリンピックにおける選手強化の課題をまとめる仕事でのことだ。日本パラリンピアンズ協会にヒアリングに訪れた際に、会長として現れたのが河合さんだった。
今となっては自分でも信じられないことだし、大変失礼な話だが、その時は、河合さんが伝説的な選手だったことを、まったく知らなかった。河合さんと同じ1975年生まれで、同じ時代を生きてきたにもかかわらず。
パラリンピック選手に関する報道が増えている
ただ、自分を正当化するつもりはないが、恐らく、当時はそれが普通だったと思う。それが今では、ガラリと変わった。車いすテニスの国枝慎吾に上地結衣、女子陸上の辻沙絵、競泳の木村敬一に一ノ瀬メイ、車いすラグビーの池崎大輔……。日々のニュースなどでパラリンピアンの名前を耳にすることが、すっかり当たり前になっている。
たった4年前、長くスポーツの世界で仕事をしてきた私にして、河合さんをまったく知らなかった。それを思うと、パラリンピアンが連日メディアに登場し、多くの人々が選手の名前を思い浮かべることができるようになった急激な変化には驚くばかりだ。注目度が上がり、パラリンピックやパラアスリートを応援、支援する人や団体・企業も増えている。
いまやオリンピックよりもイケイケのようにも思えるパラリンピック。もちろん、2020年東京大会ではメダル量産の期待もかかる。
だが、脚光を浴びる一方で、根深い課題を抱えている――。実は、それが日本のパラリンピックの現状なのだ。