「日本車とドイツ車」、デザインの決定的な差 新しいからといってそれが良いとは限らない
和田:そうでしょうね。真のクラシシズムを理解するまでは。そういうデザイナーは日本の会社に行ったほうが最初から活躍できるかもしれませんね。
プランビューこそがデザインを決定付ける
和田:今回、A5のプランビュー(真上から見た図)を手描きしてきたんです。なぜプランビューかというと、アウディは上から見た時にタイヤの位置がどこにあるかということをすごく重視するんです。サイドビューに比べて見る機会が極端に少ないですよね。デザイナーくらいしか意識していない。けれどこのプランビューこそがデザインを決定付けるんです。プランビューと面構成とタイヤの置き方でデザインはほとんど決まってしまうと言ってもいい。日本のメーカーではプランビューを意識することはほとんどなく、多くはサイドビュー(横から見た図)でデザインを決めていくんです。だから実際のクルマを見た時にタイヤの位置がおかしかったり力感がなかったりするんです。
岡崎:アウディには守るべきドレスコードがあるということですね。
和田:そうですね。
岡崎:日本のメーカーはどうなんでしょうね。ずっと守ってきた一本の筋というようなものはなさそうですが。
和田:例えば、アウディはA1とA8でクオリティについての考え方は共通なんです。A8のほうが高いので高価なパーツを使えますから、A1のほうがより頑張らなくてはならないんですが、乗った時の充実の度合とか満足感のようなものは同じにしているんです。
岡崎:そこは日本の量産メーカーとは違いますね。冒頭でジウジアーロの作品は街にあふれても見飽きないし、増えれば増えるほど環境というか街の光景がよく見えるようになるとおっしゃいましたが、量産メーカーはそういうデザインを目指してほしいと思います。で、そういうデザインのカギはどのあたりにあると思いますか?
和田:まずはプロポーションです。例えば、現行のプリウスのプロポーションは美しさを目指しているとは言い難いですね。かなりのウェッジシェイプです。2代目からだんだんウェッジが強まってきたのですが、それにもかかわらず、タイヤは小さくバランスは微妙です。リアフェンダーのあたりは浮き気味で弱い感じがする。そのためか、そこにラインを含めたいろいろなデザイン要素を加えています。さまざまな制約によってああいうデザインになってしまったのかもしれませんが。だから、日本車のデザインを変えるためには、メーカー全体、特に経営陣の意識を変える必要があると思います。デザイナーの社内での地位も含めてですが。とにかく目新しさばかりにとらわれないでほしいと思います。
岡崎五朗(おかざき・ごろう)
1966年生まれ。大学卒業と同時にフリーランスの自動車ジャーナリストとして活動を開始。現在、自動車専門誌、一般男性誌の他、テレビ神奈川『岡崎五朗のクルマでいこう!』のメインキャスターを務める。日本自動車ジャーナリスト協会理事。グッドデザイン賞審査委員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
和田 智(わだ・さとし)
1961年生まれ。1984年に日産自動車に入社し、セフィーロやプレセアなどのエクステリアデザインを担当。98年アウディへ移籍。シニアデザイナー兼クリエイティブマネージャーとして、A6、Q7、A5などのエクステリアデザインを手がける。2009年独立、クルマを中心に、さまざまなプロダクトをデザインする。
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