「日本車とドイツ車」、デザインの決定的な差 新しいからといってそれが良いとは限らない

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和田:べつにトヨタだけのことではなくて、最近のモーターショーを見ていると、仮装大賞のようなノリのものもありますね。文化性や余韻のようなものをあまり感じさせてくれず、びっくりさせたもの勝ち、みたいなところがあるのかな、と。で、最近のトヨタ車の場合、退屈なおとなしいデザインにならないように努めるあまり、奇抜なモチーフを多用しているような感じがしています。かつて「80点主義」だとか、デザインがおとなしいとか言われてきたので、そういうことへの反動があるかもしれない。

岡崎:そうかもしれないですね。でも、そうやって刺激的なデザインに走り、やがてそれを反省し、というようなプロセスを経て、素晴らしいデザインができる可能性もありますよね?

和田:もちろんあります。いまは試行錯誤している段階なのかもしれません。この先デザイン面でも尊敬されるメーカーになる道の途中にある、と考えたいですね。

”ない”ことを怖がる日本人

岡崎:いったりきたり、両極に振れながら、いつかデザインで尊敬を集めるようになるには、何か確固たるデザインの方向性、言語、表現したいことというのを明確化すべきだと思います。皆がわかるように。トヨタの人にそう言うと「クルマの種類が多いからむずかしいんですよ」と言われてしまうんですが。

和田:これからは”愛されるクルマかどうか”というのが大事だと思うんです。家電を愛することはできませんが、クルマは人間に最も近い道具であり、愛することができます。クルマ離れなどが言われるなかで、この先はいかに愛されるデザインにするか、というのがデザイナーの仕事だと思いますね。

──高性能を追求するのではなく、愛される存在を目指すとなると、メーカーのあり方からして変わらなくてはなりませんね。

和田:そうかもしれません。2~3年でマイナーチェンジして4~6年でフルモデルチェンジするような現在のサイクルも変える必要があるかもしれない。いまのデザインは、オートメーション化された生産システムに適したデザインですから。

岡崎:ファッションのように、クルマも半年ごとにデザインが変わったっていいということですか?

和田:いえ、クルマのつくり方、デザインの方法を変えるべきなんじゃないかということです。インハウスのデザイナーは上司から「お前のデザインは普通だな」と言われるのが最も怖いわけですが、VWやアウディのデザインはきわめて普通なんですよ。変わったことは一切やっていない。厳格にプロポーションを決め、肉付けをし、タイヤとのバランスを考える。素晴らしい普通を生みだす作業をしています。そうした仕事では、日本車が一生懸命やっているようなスキンデザインの工夫はさほど重要視していないんです。とはいえ、VWやアウディでも、新しい世代のデザイナーはむしろ日本的な作業法に引っ張られているようにも見えますけどね。

岡崎:ああ、それはあるかもしれない。

和田:そうでなかったら、ドイツ車のデザインがこんなに「劣化」しないですよ。OBとして言わせてもらうと。

──良くも悪くも日米欧のデザインは互いに影響を与え合うということですね。

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