ジャガーとポルシェの高速巡航は何が違うか アンダー1500万円のスポーツカーを語る
清水:ガラケーの世界にスマホが出てきたときみたいなもので、あと10年も経てば、「アンタまだFR(フロント・エンジンの後輪駆動)に乗ってんの」って言われるかもしれない。俺が古いのかもしれないけど、でも、FRは、マニュアル(MT)も同じで、操作することに全身を使うし、バランス感覚が必要とされる。だからFRでMTの組み合わせは運転を上手にさせるし、スポーツカーの基本だという気がする。
石井:その組み合わせってもはや希少ですよ。個人的な好みでは、FFですけど、メガーヌのルノー・スポールとかけっこう好き。あれだと、箱根を走ってもちょっと前のランエボみたいなイメージで走れちゃう。
清水:フロントのストラットの構造が特殊なサスペンションなんだよ。だから筑波を走ってもカウンターステアが要る。FR感覚で乗れるFFなんだよ。あそこまでいったら、スポーツカーって認めてもいい。
石井:ダブル・アクスル系はルノーとフォード・フォーカスもやってますね。 キングピンをうまくずらして。でもルノー・スポールが一番スゴイかな。
清水:それくらいフロント・サスに凝った機構があれば別だけど、基本的にはFFをスポーツカーと俺は呼びたくないな。
石井:ルノーはもうすぐアルピーヌを発売します。横置きミドシップの後輪駆動で。
清水:そりゃ楽しみだ。話は変わるけど、世界一の大メーカーのトヨタが自前でスポーツカーをつくらないのは不思議だよ。ま、スバルやBMWとやった方が早いということだろうけど。
石井:レクサスにハコのスポーツカーのRC F、GS Fがありますけど。
清水:まだトヨタはスポーツカーづくりの基盤が整ってないかもしれない。サルーンならレクサスもそこそこ戦える力を持っていると思うけど、ことスポーツカーに関しては、本気で力を入れている感じがしない。
石井:まだまだ感は正直否めないですね。
清水:BMWのM3、M4も電子制御でやや鋭く曲がる感じを演出しているところがあるんだけど、でもデバイスをオフにして乗ってみてもバランスがすごくイイ。たとえば、ポルシェはフロントにエンジンがないから、911とかボクスター/ケイマンはね、比較的ニュートラルステアがやりやすいわけ。でも、BMWは鼻っ面に直6が載ってるんだからむずかしい。実際はフロントが重たいんだけど、それを感じさせない。天才的なクルマづくりだと思う。
石井:ボクもBMWはFRのメーカーとしては世界一かなと思いますね。
ジャガーはオーガニック
清水:それに横並びするのがジャガーだね。シャシーで裏切らないのはポルシェとジャガーとBMW。あとは信用できない(笑)。いや、快適性や安全面ではメルセデスも天才だけど、楽しいシャシーは不得意かも。
石井:ただ、ジャガーって限界域でのテストではちょっと危なっかしいですよね。
清水:ABSとか、電子制御を評価するとダメなところもあるんだけど、限界領域よりももっと下の一般道や高速を流すとジャガーは最高だね。このあいだFタイプのV8スーパーチャージャーで青森まで行ったんだけど、1日で800km近く、10時間 以上乗っていてもイヤじゃなかった。なんともいえない人間的なオーガニックな走りというか、人間のフィールに合う。そこはポルシェ以上だな。
石井:カントリーロードを100km/hくらいでスーッと走っているのが気持ちいいクルマなんですよね。