カンロ「金のミルク」30億円商品に育った理由 なぜ低迷している飴市場でヒットしたのか

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「完全本格志向」が大ヒットにつながった(撮影:梅谷秀司)

だが、「原料にだけこだわればいい」というわけではない。乳はもともと香りが強くなく、色も変色しやすい。そのため、香料や着色料を使うことで課題をクリアするキャンディも少なくない。実際、先行2社は香料を使用している。しかし他のもので香りを補おうとすると食感が悪くなる。

「口から鼻に抜ける自然な香り」

佐藤さんも、当初はバニラ香料を使って、乳商品の香りを出すことも考えたという。だが、あくまで「本格志向」を目指し、無香料・無着色にこだわった。紆余曲折の末、ついに独自の配合技術で「口から鼻に抜ける自然な乳商品の香り」を出すことに成功したという。

2012年9月に発売した「金のミルク」は、数度のミルクキャンディの敗北を打ち消すかのように大ヒット。ついに同社の「金看板」となった。2014年にはシリーズの第2弾「濃い贅沢 金のミルク[抹茶]」も発売、2つの商品で業界のトップ商品として親しまれている。

JR東京駅B1グランスタ内の直営店「ヒトツブカンロ」もリニューアル。「プチギフト需要」の拡大にも対応する(写真:カンロ)

ようやく、キャンディで久方ぶりの大型の新商品ができたが、同社が中期計画(2021年売上高260億円、経常利益26億円)を達成圏にとらえるには、まだまだ大型商品が足りない(前2016年12月期は売上高197億円、経常利益6.1億円)。

そこで「キャンディだけでなく、グミなど会社全体の商品力を一段と向上させるために」と同社が約2年前に開所したのが、東京都・江東区にある「KANRO R&D豊洲研究所」だ。それまでは、研究開発の中核場所は、現本社(東京・中野区)の、地下の狭い一角にあった。「金のミルク」もここで作られた。

「研究所ができたことで、商品開発の環境は大きく改善しました。それだけに、次の大きなヒット商品を狙わないと」(佐藤さん)。コンビニを見ればわかるように、キャンディは一袋に20個弱入って150円から200円前後というのが主戦場の相場だ。この業界地図をさらに変えるような、「メガ級の大ヒット」が期待されている。

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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