黒田総裁もクギを刺した、財政規律の緩み FRBの出口戦略から見える課題と、日銀への示唆(下)

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一方で、「コスト-ベネフィット・テスト」の存在を知らず、これまでの「バーナンキ・プット」に安心してどっぷりと浸かってきた投資家の多くは、「あれ、バーナンキさん、どうしちゃったの? 前のようにまたマーケットフレンドリーでやってよ」と戸惑っているのではないかと思われる。

消費税率の引き上げを求めた黒田総裁

日本では、「日本銀行の出口政策は、先に着手するFRBを見習えばいいから簡単だ」という声がよく聞かれる。しかし、そのFRBは先行きの出口政策でもだえ苦しむことになると推測される。

黒田日銀総裁は8月8日の記者会見で、安倍政権に予定どおり消費税率引き上げを行うよう求めていた。財政規律が緩んで長期金利が上昇すると、「量的質的金融緩和の効果が減殺されるおそれがある」からだという。

中央銀行は財政政策にどのようなスタンスで臨むべきか?という問題は、今年米国で出版されて話題になっている「The Alchemists(錬金術師、副題:3人の中央銀行家と経済危機下の世界)」(N・アーウィン)でも主要テーマのひとつとして取り上げられている。

中央銀行総裁は国民から選挙で選ばれた立場ではない。財政政策は金融政策に大きな影響を与えるとはいえ、議会が決めるべき予算・財政に中央銀行はどこまで口を挟むべきかという問題が生じて来る。

同書は、キング・イングランド銀行総裁は、2010年のイギリスでの総選挙、キャメロン政権誕生の際に財政問題に関与しすぎたとみている。トリシェECB(欧州中央銀行)総裁はユーロ防衛のために欧州の政治家に緊縮財政を強く求めたが、彼は民主的手続きを超越していたとの批判が当時みられた。

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