黒田総裁もクギを刺した、財政規律の緩み FRBの出口戦略から見える課題と、日銀への示唆(下)

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欧州では過去数年、過酷な財政再建策が成長率に打撃を与えてきた。しかし、最近はその改善の成果が現れてきている。

消費税率の引き上げは遅れてはならない

たとえば、イタリアの財政赤字の対GDP比は、2009年には5.5%だったが、今年は2.9%へ減る見通しだ。欧州委員会は同国を「過剰財政赤字是正手続き」から外す方針である。つまり、単年度の財政赤字に関しては、イタリアはユーロ圏内で今年から「優等生」のクラスに入るのである。また、2014年のイタリアの基礎的財政収支(プライマリー・バランス、国債費を除く歳出と歳入の収支)の対GDP比については、欧州委員会は3.1%の黒字、OECDも2.95%の黒字になると予想している。

南欧の人々は厳しい財政再建策に耐えてきたわけで、そういった姿を見てきた海外の投資家の目に「日本はだらしない」と思われないように説明していく必要がある。

先日、閣議了承されたわが国の中期財政計画では、基礎的財政収支の対GDP比は2020年度にようやく黒字に転換するとの想定になっている。しかも、その前提となるシナリオは3%程度の名目成長が続くというかなり楽観的なものである。消費税率の引き上げが遅れると、基礎的財政収支の黒字転換の時期はさらに遅れていくことになる。

増税によって景気回復の腰が折れることは避けなければならない。しかし、足元の景気の状況にとらわれすぎないよう、バランス感覚を備えた決断が政府には望まれる。

加藤 出 東短リサーチ社長

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かとう いずる / Izuru Kato

1988年、横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを2001年まで兼務。02年2月よりチーフエコノミスト。13年2月より東短リサーチ代表取締役社長。短期金融市場の現場から各国の金融政策を分析。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』  など著作多数

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