東京人が知らない北九州発「角打ち」の魅力 これぞ日本が誇るべき文化だ!
「角打ち」という言葉をご存じだろうか? 九州北部生まれ、または在住の人間でなければ、なじみのない単語かもしれない。実は、全国的に少しずつ人気が高まっている角打ちという概念は、言葉自体を知らなくても、実は体験したことがある人が少なくないはずだ。
まずは読み方。「かどうち」ではなく、「かくうち」が正解だ。定義に関しては、簡単に言えば立ち飲み屋のことなのだが、実際に角打ちと立ち飲み屋とはささいながら重要な違いがある。
立ち飲み屋と何が違う?
立ち飲み屋とは、従来の酒場と違っていすを使わずに、高めなカウンターやテーブルの前に立って飲む店で、安価で飲んだり手軽に食べたりすることができ、周りの客と話しやすい、気軽な雰囲気を醸し出すことが特徴。一方、角打ちは似たような空間だが、飲むためのバーではなく、酒店内に立ってそこに置いている酒を飲むところだ。
『日本国語大辞典』(小学館)によると、角打ちとは「酒を升に入ったまま飲むこと」。つまり、飲み屋で飲むことと違って、酒を売ることが主な目的である店の隅っこで飲むことを角打ちという。立ち飲み屋は飲むためで、角打ちは飲むスペースを設けている酒販店ということだ。
福岡に住む私にとって、角打ちはなくてはならない存在だ。7年前、大阪から福岡に引っ越してきた当初は、福岡人はみんな屋台で飲むのだろうと勝手に想像していた。しかし、日本酒好きの飲み仲間ができて何軒かの角打ちに連れて行かれるうちに、いつの間にやら常連客になってしまった。もちろん、日本中に角打ちやそれに似た立ち飲み屋があるのだが、それでも福岡ほど日常の生活になじんでいないのではないかと感じる。
角打ちは主に九州の言葉だ。関西では酒屋で飲むことを「立ち呑み」と言い、立ち飲み屋で飲むことを「立ち飲み」と言い分けられるそうだ。東北では角打ちを「もっきり」と、島根や鳥取では「たちきゅう」と呼ばれるらしい。
日本酒に関する情報サイト「Sake Viva」によると、昔の日本人は酒を買うとき、瓶の代わりに持参の徳利ではかった量の酒を注ぎ入れて持って帰るという量り売り制度が一般的だった。ただし、その酒を味見したいときや、家に帰るまで待ちきれない場合は、四角い升(=角打ちの「角」)を使ってその場で飲むことを許される店があった。
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