佐藤琢磨「自ら挑戦しないと運はつかめない」 日本人で初めてインディを制した男の真実

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:そこからF1へと上がっていった。

佐藤:イギリスF3で確実に結果を残せば、F1のチームが放っておきません。イギリスF3挑戦1年目の終わりに、F1テストのオーディションに合格しました。その後は、F1テストドライバーを務めながら2年目で頂点を取って、その結果エディ・ジョーダンのチームで、2002年からF1に参戦することが決まりました。

:F1の世界って、実力はもちろんですが、チームやスポンサーも含めて、大きな枠で物事を動かさなければならない。相当難易度が高い世界だと思うんですが、何か特別に気をつけていたことはありますか?

佐藤:もちろんドライビングのパフォーマンスは、自分が最も自分らしくいられる瞬間ですし、速くて当たり前、という世界でもあります。ただモータースポーツはスポンサーシップがないと成り立たない競技ですから、僕もある意味、営業活動をしなければなりません。しかし、企業の広告塔になるということではなく、純粋に夢を追いかけるアスリートとして共感してもらい、応援してもらう。そのために自分をアピールするということが、必要な能力の1つだし、大切なことだと思います。

:自分のパフォーマンスだけではなく、さまざまな要素を総合的に組み立てて、佐藤琢磨を表現しなくてはならない、ということですね。

佐藤:本当は才能1本でいけるっていうのが理想ですけど、やはりまわりの状況も含めた、運に恵まれないと難しいでしょうね。

:どういうときに、運に恵まれていると感じますか?

佐藤:人の一生ということで考えたら、どんな人にも運やツキは同じようにあると僕は思うんですね。ただ、それが自分の必要なタイミングで来るとは限らない。だったら、自分から取りにいくしかない。取りにいくためには挑戦を続けないと、とは思っています。

「インディカー・シリーズ」でチャレンジを続ける

:現在はインディカー・シリーズ(F1と同じオープンホイールを使用した北米最高峰のモータースポーツ。年間約16戦開催される)で、同じようなチャレンジを続けています。

佐藤:そうですね。インディカー・シリーズはF1ほど複雑な政治要素が絡み合うことがなく、誰にでもチャンスがあります。たとえばF1でいうと、メルセデスやフェラーリ、レッドブルに所属していなければ表彰台はおろか、優勝なんて夢のまた夢なわけです。だけどインディカーだったら、1台体制の小さなチームでも勝てる可能性がある。まさにアメリカン・ドリームの世界。アイデアと戦略次第で勝負でき、面白いレースだと思います。

:それでも、F1からインディカー・シリーズに舞台を移られるというのは、大きな決断だったのではないですか?

佐藤:自分の中で覚悟を決めて答えを出すのに2年ほどかかりました。少年の時にF1に夢をもらって、ずっとF1だけを目指してきましたからね。ただ、理不尽な理由で契約できなかったりして、F1だけがレースのすべてなのかっていうのを自分に突きつけました。

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