佐藤琢磨「自ら挑戦しないと運はつかめない」 日本人で初めてインディを制した男の真実
森:人生を変える大きな意思決定をされたわけですね。
佐藤:そうですね。ドライバーとしていい経験を積んだ状態で、年齢的にも脂の乗っているいい時期に、何もできず、何で指をくわえて見てなきゃいけないんだ、と。
森:インディカー・シリーズは、もともと興味があったんですか?
佐藤:実は、F1よりも前から知っていました。でも、テレビでしか観たことがなかったので、一度実際に観てみようと。そしてインディアナポリスを訪れたときは、それこそ、10歳の頃にF1を観たとき以来の衝撃を受けました。というのも、“F1を経験しているんだから、スピードに対する驚きなんてほかではありえない”と思っていたのですが、インディカーのスーパースピードウェイのコースでは、390kmも出ている状態で、減速しないでコーナーに突っ込んでいくわけですよ。「この人たち頭おかしいんじゃないの? ちょっと俺にはできないかも」と思ったくらいの衝撃でした。
森:もうそれで、一気に火がついたと。
佐藤:はい。インディ、スゲェな! って。誰にでもチャンスがあるというのも魅力的ですし、オントラックのパフォーマンスも非常に面白いなと。「あ、こういう世界があるんだ」っていうのは、やはり目で見て、耳で聞いて、空気に触れて、リアルに体験しないとわからないですよね。今はネットやスマホで何でも見られる世の中ですが、リアルな体験こそが重要だなと思います。実際に自分の価値観や考え方がガラリと変わって、運命すら変わるのを目の当たりにしました。
森:劇的な変化を経験した琢磨さんが、これから目指すものにすごく興味があります。
佐藤:インディ500(アメリカのインディアナ州で開催される500マイルレース)の制覇と、インディカー・シリーズのチャンピオンが夢ですね。今年(2017年)40歳を迎えるんですけど、まだまだ現役でやりますよ。
自分から動き出して世界をつくっていく
森:日本の良さみたいなものについては、どう思われていますか?
佐藤:1度でも海外で生活してみると、いかに日本がすばらしいかってことに気づきます。たとえば白いご飯とみそ汁が、どれだけおいしくて大切なものか、納豆なんか出てきた日には、拝まなきゃいけないくらいの感じになる(笑)。今、自分が置かれている状況への感謝の念が生まれるんですよ。
そうすると、すべてのことに対して、これまで以上にリスペクトも生まれてきます。それがまたいい影響を自分に及ぼし、自分がやりたいことの熱量やクオリティも自然と上がっていく。ものすごくいいサイクルが生まれるんですね。その良いサイクルに乗っかっていければ新たな道が拓けたり、いい運が巡ってくるのではないかと思います。
森:最後に今、将来に不安を抱いていたり、どういう方向にいけばいいか悩んでいる人たちに、メッセージをいただきたいのですが。
佐藤:自分のモットーでもある“No attack,No chance!”という言葉を贈りたいです。自分から動き出して世界をつくっていく。挑戦していかないと、運はつかめません。インターネットで調べることも大事ですが、自分の足で、見て、触れて、感じることで本当に多くのことを学べます。実際にF1しかないと思っていた自分が、北米でインディカー・シリーズに魅せられて、新しい道が開けていきましたから。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら