「ユーロ危機再燃」が免れないこれだけの理由

早めに手を打つ必要がある

欧州の官僚たちは、欧州統合を自転車に例えてきた。前進し続けなければ倒れるのだと。だとしたら、時期尚早にも統一通貨を採用したことは、近道をして乾いてもいないセメントに深くはまり込んだということになりそうだ。

皮肉なことに、1980〜90年代にかけて、統一通貨の導入は南欧諸国で広く支持されていた。一般市民が物価安定を望んでいたからだ。だが、ユーロ圏の外では、統一通貨なしでも物価上昇率を抑えることができている。

物価安定にとってはるかに重要なのは、独立した中央銀行の存在だ。仮にイタリアやスペインがユーロを採用する代わりに、中央銀行に強い独立性を与えていれば、それで低インフレは実現できただろう。ここまで債務問題が悪化することもなかったかもしれない。

だが今となっては、ユーロという名のセメントの深みから、いかにEUを救い出すかが問題だ。欧州の政治家は認めたくないだろうが、現状維持を続けるのはおそらく無理だ。財政統合を大規模に進めるか、ユーロ崩壊で大混乱に陥るか、そのどちらかにならざるをえない。今後5〜10年にわたってユーロが試練にさらされずに済むと考えるようでは、いかにも甘い。

なぜ金融市場はこれほど落ち着いている?

現状維持が無理だとしたら、なぜ金融市場はこれほど落ち着いているのか。イタリア10年債のドイツ国債に対するスプレッドが2%以下とは、どういうことか。

背景には、どれほどドイツが抵抗しようが、南欧諸国への大規模支援策は不可避だとの見立てがあるのかもしれない。欧州中央銀行はすでに南欧諸国の債券を買い入れることで、事実上の財政支援を行っている。マクロン氏の勝利によって、ユーロ圏共同債の発行に向けた議論も熱を帯びている。

あるいは、南欧の債務危機国はあまりに深く統一通貨に組み込まれているので、ユーロ離脱はありえないと投資家は踏んでいるのかもしれない。ギリシャなどがデフォルト(債務不履行)できないよう、引き続きドイツが緊縮財政をねじ込んでいくシナリオだ。

いずれにせよ、ユーロ圏の指導者はユーロが再び重大局面にさらされるのを待つのではなく、今すぐに手を打ったほうがいい。

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