EU消滅の引き金は「知識人たちの錯覚」である ブレグジット予言者による「国民国家」復活論

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「フレグジット」はいったん回避されたが…。欧州議会が行われているストラスブールのルイーズ・ワイス・ビル(写真:Leonid Andronov)
2015年に上梓された『欧州解体』で英国のEU離脱を予言していたロジャー・ブートル氏。
投票結果次第では英国に続くEU離脱という道もありうるフランス大統領選挙の決選投票を前に、同書でEUの根本的矛盾を論じた部分を中心にお届けする。

根本的に誤っていたビジョン

5月6日(土)午後10時から放送されるNHKのBS1「経済フロントライン」に『欧州解体』の著者、ロジャー・ブートル氏がインタビュー出演予定(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

EU(欧州連合)の将来について考えるときに、ぜひとも理解しておかなければならない点がある。今後20〜30年の間に世界の権力構造は――EUの指導者たちはそこにEUを組み入れたいと熱望しているわけだが――大きく様変わりするだろうということだ。具体的にどう変わるかは定かではないが、それとEU創設の父たちが思い描いていたものが合致することはほとんどありえない。

歴代のEUの指導者たちは、根本的に誤ったビジョンを持つきらいがあった。彼らの頭の中には、地理的に近接した国々が経済的・政治的に固く連合するという考え方しか存在しない。興味深いことに、これは大陸の広い範囲が1つの帝国のもとに統一されていた第1次世界大戦までの欧州の姿と符合する。しかし直近の数十年間に世界で起こったことを踏まえれば、このようなビジョンは現代の現実とはまったく相いれない。

彼らのビジョンはまた、海を挟んで築かれた、かつての広大な政治・経済連合と完全なコントラストをなしている。英国、フランス、スペイン、ポルトガル、オランダは、いずれも7つの海を股にかけた大帝国を経営した。

17世紀にはもちろん、19世紀から20世紀前半になっても帝国内の遠隔地との連絡は困難だったが、何とかうまくやれていた。

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