日本にも欧州にも「真の指導者」が欠けている あのウォルフレン氏は今どう感じているのか

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オランダの下院選後、最大議席を獲得した自由民主党の党首であるルッテ首相を表紙にした雑誌
40年以上にわたり、日本について数々の著作(『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』など)によって政界を鋭く分析してきたオランダ出身の作家・ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学名誉教授)。1990年代にオランダに戻ってからもその筆は衰えていないが、近年は欧州政治の行方に研究対象を移行させている。
「極右」といわれる政治運動が母国オランダ、フランスなど欧州内で人気を集める中、ウォルフレン氏は欧州の現状をどう見ているのか? 日本向けに欧州についての本を執筆中という同氏に、アムステルダムで話を聞いた。

 

――欧州では、反移民の「極右」、あるいは「ポピュリズム(大衆迎合)」と評される政治家が国民からの支持を拡大させている。3月15日に選挙が終わったばかりのオランダでは反移民、反イスラム教のヘールト・ウィルダース氏が率いる自由党(PVV)が第2党になった。フランスでは4月と5月に行われる大統領選挙で、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が有力候補となっている。

非常に単純化して話が伝えられている。その国によって事情は異なるが、細かい点は報道されない。自国中心の排他的「ポピュリスト」政治の影響が、実際以上に誇張して伝えられていると思う。

たとえば、ウィルダース氏の台頭だが、これ自体が政治的に大きな動きというわけではなく、ある種の兆候にすぎない。人気が出たのはほかの政党が移民の増加に対する人々の不安をくみ取ることをせず、十分な対処をしてこなかったからだ。

欧州がいかに新しい政治体を作るかを見たかった

――ウィルダース氏はイスラム教のモスク(礼拝所)を閉鎖し、聖典コーランの禁書を訴えている。モロッコ人の移民に対するヘイトスピーチで、昨年有罪になったほどの人物だ。

ウィルダース氏自身はあまり深く考えずに発言してしまうところがあるが、どうやって人の注目を集めるかをよく知っている。ほかの政治家が彼の発言を批判すればするほど、人気が出てしまう。

新たに誰が政権を取ることになっても、そもそも、オランダはもはや主権国家とはいえない。経済など重要な事柄の決定権が欧州連合(EU)の官僚の手に移っているからだ。

私が日本から欧州に移住した大きな理由の1つは、欧州がいかに新しい政治体を作るかを見たかったからだ。米国の欧州版つまり「欧州合衆国」ではなく、国家でもなく、連邦国のようなイメージだ。

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