池上彰が愕然とした「誘拐経済」の深すぎる闇 誘拐がテロ組織の資金源になっている!

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誘拐交渉人に取材する池上彰。詳細は新春1月3日(火)18時から、テレビ東京全国ネット「池上彰の 2017年の世界を見に行く」で放映(写真:テレビ東京)
「これは恐ろしい本」。そう断言するのは自らも中東取材の経験が長い池上彰氏だ。経済のグローバル化にともなうテロのグローバル化の分析をいち早く行ってきたロレッタ・ナポリオーニの新著『人質の経済学』は、2002年の9.11事件以降、どのようにテロ組織が、誘拐を大きな資金源にして成長していたかが書かれている。人質の救出解放を交渉するプロの「誘拐交渉人」、政府高官、救出された人質らに直接取材し、このビジネスの広がりを取材した同著を、池上彰氏が解説する。

 

これは恐ろしい本です。かけがえのない生命を持った人間が、単なる商品として取引される実態を克明に描いているからです。

「1カ所での滞在時間は15分以内で」

ここには、シリアでIS(イスラム国)の人質になって殺害された後藤健二さんも登場します。後藤さんとは、ヨルダンやレバノン、リビアでご一緒し、危険地帯での取材方法など貴重なアドバイスを受けました。後藤さんから受けたアドバイスの中のひとつに「15分ルール」があります。リビアでカダフィ政権が崩壊した直後に、テレビ番組の取材でリビアの首都トリポリ各地で撮影をしていたときのこと。「1カ所での滞在時間は15分以内で」というものでした。

どこに過激派が潜んでいるかわからない。過激派のテロ部隊あるいは誘拐実行組織に通報する人物もいるだろう。その連中が我々取材陣を発見した場合、実行部隊に連絡し、部隊が駆け付けるまで15分はかかる。だから、その前に移動しなさい、というものでした。

経験豊富な後藤さんならではのアドバイス。しっかり守って取材を続けました。それだけに、後藤さんがなぜ殺害されてしまったのかについての本書の分析は心が痛みます。

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